日消誌

2015;112:863―870

十二指腸傍乳頭憩室および憩室内結石により急性膵炎を発症後, 腸石イレウスを続発した 1 例 森 居 武 田 齋 藤

真 史 晋一郎1) 秀 一

土 肥 三 浦 岡 部

容 子 世 樹 真一郎1)

槇 田 金 子

智 生 高 明2)

要旨:症例は 63 歳女性.前日より続く腹痛を主訴に来院.諸検査を行い十二指腸傍乳頭憩室炎および 憩室内結石に起因する急性膵炎と診断した.膵炎は保存的に治療し 2 週間で改善した.来院時 CT 検 査で骨盤腔に巨大な卵巣囊腫が認められ悪性も否定できないことから,子宮全摘および両側付属器切除 術が施行された.術後 3 日目に突発する腹痛・嘔吐が出現.憩室内から逸脱した結石による腸石イレ ウスと診断し,小腸切開截石を行い治療した. 索引用語:傍乳頭憩室,腸石イレウス,Lemmel 症候群,憩室内結石





と考えここに報告する.

十二指腸に存在する憩室は性別を問わず加齢と

I





ともに増加傾向を示し,その多くは十二指腸下行

患者:63 歳,女性.

部の Vater 乳頭近傍に存在する.同部に存在す

主訴:腹痛.

る憩室は傍乳頭憩室と呼ばれ,乳頭部に近接して

既往歴:特になし.手術歴なし.

いるが故,胆汁や膵液の流出障害の一因になり得

家族歴:特記事項なし.

ると考えられている.この憩室によってもたらさ

生活歴:機会飲酒.喫煙なし.

れる物理的な圧排や炎症の波及が Vater 乳頭を

現病歴:2013 年 3 月,前日より続く腹痛を主

はじめ胆管や膵臓に至る病態は 1934 年 papillen

訴に近医を受診され,同日精査加療目的に当科紹

syndrome と報告され,以来報告者の名にちなみ

介となった.当院来院時血液検査所見および画像

Lemmel 症候群と呼ばれる1).

所見から急性膵炎と診断し即日入院となった.

今回われわれは十二指腸傍乳頭部における憩室

入 院 時 現 症:身 長 156cm,体 重 47.8kg,血 圧

炎がきっかけとなり急性膵炎を発症,いわゆる

134! 77mmHg,脈拍 96 回! 分,整,体温 38.4℃.

Lemmel 症候群を呈し,消炎後に行った骨盤腔内

眼球結膜に黄染なし.腹部は心窩部に圧痛を認め

手術を契機にその周術期において憩室内部の結石

た.

が落下し腸石イレウスに至った 1 例を経験した.

入院時検査所見(Table 1) :白血球 14600! μL,

このような憩室炎から結石落下までの一連の経過

CRP 4.52mg! dL,AMY 853IU! L,lipase 1458IU!

を示し得た報告は国内外でも珍しく,貴重な症例

L と炎症所見および膵酵素の上昇を認めた.ビリ

1)松戸市立病院消化器内科 2)松戸市立病院外科 Corresponding author:森居

真史([email protected]) (51)

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Table 1. 入院時検査所見 血算 WBC  RBC Hb Ht Plt

γ-GTP 14600 460×104 13.3 38.7 21.3×104

/μL /μL g/dL % /μL

凝固 PT APTT

82.9 % 24.9 sec

生化学 T-bil D-bil AST ALT LDH ALP

1.77 0.24 15 15 180 215

mg/dL mg/dL IU/L IU/L IU/L IU/L

ChE LAP CK AMY TP Alb T.chol TG BUN Cre Na K Cl Ca CRP Glu lipase

14 632 50 39 853 7.0 4.4 222 42 10.4 0.43 139 3.4 101 8.9 4.52 143 1458

IU/L IU/L IU/L IU/L IU/L g/dL g/dL mg/dL mg/dL mg/dL mg/dL mEq/L mEq/L mEq/L mg/dL mg/dL mg/dL IU/L

ANA IgG IgA IgM HBsAg HCVAb

<40 1273 mg/dL 124 mg/dL 78 mg/dL (−) (−)

ルビンは T-bil 1.77mg! dL と軽度上昇を示すも間

ペラゾン)2g! day,ナファモスタット 20mg! day

接優位であり,胆道系酵素に異常は認めなかっ

にて保存的に加療し,自覚症状および検査所見は

た.

ともに改善した.さらなる原因精査のため,第 5

腹部造影 CT 検査所見(Figure 1) :膵は腫大

病日に内視鏡的逆行性胆管膵管造影(ERCP)を

しその周囲に軽度の液体貯留を認めた.造影不良

行った.

域はなく Grade 1 の急性膵炎と診断した.下部胆

ERCP 検 査 所 見(Figure 3) :Vater 乳 頭 は や

管は憩室により圧排を受け追従困難であった.上

や発赤調で,その 10 時方向に白色膿汁の流出を

部胆管および肝内胆管に明らかな拡張はなかっ

ともなう傍乳頭憩室を認めた.憩室開口部は浮腫

た.十二指腸 Vater 乳頭近傍に憩室と,その内

様で内部は黄色の結石で充満していた.造影カ

部に周囲石灰化をともない中心部に air を含有し

テーテルを用いて破砕を試みたが硬く,砕石は困

た径 25mm 大の結石像を認めた.憩室開口部近

難であった.また結石径に対し憩室開口径は明ら

傍の粘膜は淡く造影され浮腫性に肥厚していた.

かに狭く,ここでの無理な截石は穿孔のリスクを

胆囊は胆石をともないやや腫大していたが,胆囊

高めると考えた.膵管に異常はなく,胆管は弧状

炎を疑う所見は乏しかった.

に圧排狭窄をきたしているもののカテーテルの挿

MRCP 検査所見(Figure 2) :肝内胆管に拡張

入はスムーズで,また上部胆管に拡張はみられな

はなく下部胆管は圧排され狭窄偏位していたが下

かった.検査データも改善していたことから乳頭

端まで追うことが可能であった.主膵管は頭部領

切開や胆管ドレナージは行わず終了とした.

域にて不明瞭であったが拡張はなく,また双方の

今回来院時の腹部 CT 検査にて骨盤腔に卵巣と

管内に欠損像は認められなかった.

思われる径 11cm 大の多房性囊胞性病変が認めら

以上より,十二指腸傍乳頭憩室ないしその内部

れたことから(Figure 4) ,当院婦人科へコンサ

の結石が原因となって膵液の流出障害をきたし急

ルトとした.経膣エコー検査の結果,囊胞壁一部

性膵炎に至った,いわゆる Lemmel 症候群と考

に充実性部分が認められ悪性も否定できないとの

えた.補液および抗菌薬(スルバクタム! セフォ

見解であったため早期に手術を行う方針となり, (52)

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膵炎を発症してから 3 週間後に子宮全摘および両 側付属器切除術が施行された.術後 3 日目,突発 する食後嘔吐および腹痛を認め当科コンサルト. 同日施行した腹部 CT 検査にて回腸に結石(腸石) を認め,ここから口側の腸管が拡張していた.腸 石は内部に air 像を有し,形・大きさとも入院時 CT 検査で認められた傍乳頭憩室内の結石に酷似 していた.同時に憩室内に存在していたはずの結 石は消失しており(Figure 5) ,以上から憩室よ り逸脱した結石に起因する腸石イレウスと診断し た.胆囊胆石に変化はなかった.外科コンサルト の上,イレウス管を挿入し自然排石を期待したが 改善に乏しく,イレウス発症 4 日後,開腹下に小 腸切開截石を行った.結石は回盲部より 20cm 口 側にて緩く固定されていたが,挙上すると容易に 移動した.またこの結石を先頭に口側腸管は拡張 していた.回収した結石の赤外線吸収スペクトル 分析(IR)では,同定不能成分を含有するもの のデオキシコール酸と類似した IR パターンが得

Figure 1. 腹部造影 CT a:膵は腫大しその周囲に軽 度の液体貯留(矢印)を認めた.b および c(b 拡大): 下部胆管は憩室によって圧排を受け追従困難であった (矢頭) .肝内胆管に拡張はなく,十二指腸 Vater 乳頭近 傍に憩室とその内部に結石を認めた(白矢印).憩室開口 部の周囲粘膜は淡く造影され肥厚していた(黒矢印).胆 囊はやや腫大し内部に胆石を認めたが,胆囊炎を示唆す る所見はみられなかった.

られた(Figure 6) .なお,卵巣囊腫に対する切 除標本の病理結果は粘液性囊胞腺腫であった. 1 年 5 カ月経った現在,症状の再燃なく経過さ れている. II





十二指腸憩室は結腸憩室についで多いとされ, 消化管造影検査による検討では 5∼10%,剖検例 では 22% にみられたと報告されている2)3).これ

Figure 2. MRCP a および b(T2WI 冠状断):下部胆管は圧排され狭窄偏位していた が下端まで追えた.主膵管は頭部領域で不明瞭であったが拡張はなかった.双方の管内に 欠損像は認めなかった.

(53)

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Figure 3. ERCP a:憩室より白色膿汁の流出を認めた.b:洗浄すると黄色の結石が内部に確認された. c:発赤調の Vater 乳頭.その 10 時方向に憩室を認めた(矢印) .d,e:膵管に異常はなかった.胆管は 弧状に圧排狭窄をきたしているがカテーテルの挿入はスムーズであった.上部胆管に拡張はなく胆管内に 欠損像は認めなかった.

Figure 4. 骨盤腔検査 a:CT,b:MRI(T2WI 矢状断).骨盤腔に径 11cm 大の多房 性卵巣腫瘍を認めた.

ら憩室は腸管壁全層を含む真性憩室であることは

で形成されるといわれる4).好発する部位はその

極めてまれで,加齢とともに後天的に形成される

ほ と ん ど が Vater 乳 頭 近 傍 2∼3cm 以 内 で あ

仮性憩室がその大部分を占める.成因としては結

り1),これには背側膵と腹側膵の癒合部における

腸憩室と同様,粘膜内の血管貫通部位における周

抵抗減弱性や,そもそも乳頭部が胆管・膵管の貫

囲支持組織の脆弱性に腸管内圧が付加されること

通部であることに加え,前腸末端と中腸頭方部と (54)

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Figure 5. 腹部造影 CT a(冠状断),b:回腸内部に air を含有し周囲石灰化をともなう結石像(腸石) を認めた(矢印) .ここより口側の腸管は拡張していた.c・d(イレウス発症前) ,e・f(発症後) :イレ ウス発症前に認められた憩室内の結石は発症後に消失していた(矢印および矢頭) .回腸内の腸石と酷似 していた.

Figure 6. 赤外線吸収スペクトル分析(IR):デオキシコール酸と類似 した IR パターンが得られた.

いう異なる発生原基の接合部であることなどが関

くないことなどから,憩室自体が臨床的に症状を

与していると考えられている5).

呈することは極めて少ない6).しかし時に通過障

十二指腸においては憩室があったとしても比較

害や炎症,出血,穿孔さらに結石形成などを認め

的大きいことが多く,また食塊は速やかに流れ停

ることがあり7),特に Vater 乳頭近傍に存在する

留することが少ないこと,腸内細菌量もさほど多

場合は憩室による圧排や炎症が原因となって胆汁 (55)

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や膵液の流出障害をきたし Lemmel 症候群を呈

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第5号

たがって無症状であっても憩室内結石に対しては

1)

積極的に処置を講じるべきと考えられる13).

することが広く知られている .ただし疾患頻度 としては必ずしも多いとはいえず,むしろ臨床上

十二指腸や小腸に存在する憩室は,腸石形成に

は傍乳頭憩室に端を発した慢性的な変化が Oddi

おいて,腸管狭窄や盲管などと並び腸内容をうっ

括約筋機能に影響し総胆管結石症を合併しやすい

滞させる機械的因子の 1 つに挙げられている.そ

ことや,その際の内視鏡的処置において問題とな

こに腸内 pH の変化や腸内細菌による酵素作用な

8)

ることの方が多い .

ど化学的因子が加わることで,憩室内に結石が形

これら合併症の中で重篤なケースは憩室穿孔か

成されると考えられている.形成される腸石には

ら腹膜炎に至る例であるが,2012 年の文献によ

仮性結石と真性結石とがあるが,仮性結石は不溶

2)

ると世界で 162 例と報告されている .比較的ま

性物質の塊や腸内容の単なる沈殿物と定義され,

れといえるが,今回われわれが経験したような十

毛髪,食物繊維,糞石,異物などが原因とされる.

二指腸憩室内結石の落下が原因で腸石イレウスに

一方,真性結石は通常の腸液が沈殿・貯留した結

至った例はさらにまれであり,1992 年の文献に

果形成されるもので,成分内容により胆汁酸石,

3)

よると世界で 30 例 ,この後に続く報告も空腸憩

カルシウム塩石に分類される14)15).この中で胆汁

室やメッケル憩室にともなう類似症例は散見され

酸石は酸性条件下で沈殿し形成されるため,一般

るものの,十二指腸憩室に限ると現在までに 2 例

に十二指腸や小腸上部で形成されることが多いと

を重ねるに過ぎない(PubMed にて「enterolith」

いわれる16).自験例では結石分析の結果,デオキ

「ileus」「diverticulum」をキーワードに検索) .

シコール酸を成分とする胆汁酸石であったが,上

国内に目を向けると医学中央雑誌にて「十二指腸

記を踏まえ傍乳頭憩室内において形成された真性

憩室」「結石」「イレウス」をキーワードに検索し

結石と考えられる. 十二指腸憩室の診断は消化管造影検査,内視鏡

得た範囲(1983 年から 2013 年まで,会議録は除 9) ∼11)

.加えて

検査,腹部 CT 検査などによってなされるが,多

これらの報告はイレウス発症後から後方視的に検

くは無症状で経過するため通常は何かの機会で検

討がなされたものであったが,今回イレウス発症

査が行われた際に付随的に指摘されることがほと

前よりその過程を画像所見とともに捉えることが

んどである.したがって平素より意識されること

できた点は意義深い.

が少ない分,有症状時にはその存在や関与を積極

く)では 3 例しか認められなかった

一般に十二指腸憩室において治療の対象となる

的に疑うことが極めて重要となる.一般に腹部

12)

のは全体の 1∼2% といわれており ,多くは無

CT 検査の有用性が高く,特に穿孔例においては

症状で経過し特別な治療は要さない.しかし無症

一見してそれと認識できないことも少なくない

状であっても特に憩室内に結石が形成されている

が,後腹膜腔における微量なガス像や液体貯留な

場合は,続く合併症に注意が必要である.上述の

どを丹念に読み解くことが正診へとつながる2)6).

キーワード検索にて「イレウス」を省いて再抽出

十二指腸憩室のマネージメントについては有症

し,内容を吟味した上で十二指腸憩室内結石との

状時には手術が推奨されている.しかし傍乳頭憩

関連が確認できた報告は 18 例あったが,その内

室においては周辺臓器との解剖学的位置関係から

訳は穿孔・穿通が 10 例(55.6%) ,腸石イレウス

時に過大侵襲となる恐れもあり17),また膵液漏な

が 3 例(16.7%) ,憩室炎 1 例,その他 4 例であっ

ど術後合併症のリスクを勘案するとその対応には

た.実に 7 割強の症例で穿孔やイレウスなど外科

慎重さが求められる.穿孔例ではその多くは憩室

的処置を要する重篤な合併症に至っていた.厳密

内翻埋没術や憩室切除術から膵頭十二指腸切除術

には結石との因果関係を直接的に示すことが困難

までさまざまな処置が行われているが18),保存的

なものも含まれるが,その存在が続発する合併症

に治療し得た報告もみられるため2),さらに議論

の誘因となっていることは容易に想像される.し

を重ねていく余地がある.憩室内結石について (56)

2015年 5 月

869

は,上述したように無症状のうちに内視鏡などを

思われる.さらなる症例の集積を行い,一定の対

13)

応策を検討していく必要がある23).

用いて截石を行うことが理想ではあるが ,現実 的にはどのようなタイミングでそれを発見し治療





を行うかという問題が残される.なお,憩室内結

十二指腸傍乳頭憩室および憩室内結石が原因と

石を原因とした症候に対しては結石除去のみで再

なり急性膵炎に至った,いわゆる Lemmel 症候

発なく良好な経過を

ることも報告されている

群発症後に,卵巣囊腫に対する手術を契機として

が ,残された憩室への対応は定まっていない.

憩室内から結石が逸脱し腸石イレウスを続発した

腸石イレウスに関しては自然排石されることはま

1 例を経験した.十二指腸における憩室内結石は

17)

19)

ずまれであり摘出が原則であるが ,その方法に

まれな病態であるが穿孔やイレウスの原因となる

ついてはいくつかの選択肢が存在する.状況に合

ことがあり,機を逸せず除去しておくことが望ま

わせて判断されるところであろう.

しいと思われた.

本症例の経緯としては,まず憩室内結石が誘因 となって十二指腸傍乳頭憩室炎を発症後,近傍に

本論文内容に関連する著者の利益相反

存在する Vater 乳頭にその炎症が波及し Lemmel

:なし

症候群を呈したことがそのはじまりである.その 文

際,憩室内部にあった結石は炎症のため浮腫様に



1)河上 洋:Lemmel 症候群(傍乳頭憩室症候群) . 別冊日本臨床 11,537―539 : 2009 2)Thorson CM, Paz Ruiz PS, Roeder RA, et al : The perforated duodenal diverticulum. Arch Surg 147 ; 81―88 : 2012 3)Yang HK, Fondacaro PF : Enterolith ileus : a rare complication of duodenal diverticula. Am J Gastroenterol 87 ; 1846―1848 : 1992 4)López Zárraga F, Saenz De Ormijana J, Diez Orive M, et al : Abdominal pain in a young woman (2009 : 8b). Eur Radiol 19 ; 2783―2786 : 2009 5)上田晃子,須田耕一,信川文誠:胆道系 病態 生理 十二指腸傍乳頭憩室症候群(Papillen syndrome,いわゆる Lemmel 症候群).胆と膵 25 ; 778―780 : 2004 6)Coulier B, Maldague P, Bourgeois A, et al : Diverticulitis of the small bowel : CT diagnosis. Abdom Imaging 32 ; 228―233 : 2007 7)Neill SA, Thompson NW : The complications of duodenal diverticula and their management. Surg Gynecol Obstet 120 ; 1251―1258 : 1965 8)窪田敬一,伊藤 徹,柴山和夫,他:胆石 症 に おける傍乳頭部憩室の意義について.日本消化 器外科学会雑誌 21 ; 845―851 : 1988 9)北川光一,石塚直樹,小松永二,他:十二指腸 内結石落下嵌頓による腸石イレウスの 1 例.日 本臨床外科学会雑誌 69 ; 1935―1940 : 2008 10)古北由仁,谷田信行,大西一久,他:十二指腸・ 空腸憩室に伴う落下腸石によりイレウスをきた し た 1 例.日 本 臨 床 外 科 学 会 雑 誌 71 ; 1185―

肥厚し巾着様となった開口部によって閉じ込めら れるように存在するも,消炎につれて粘膜浮腫が 改善し憩室開口部は次第に開大,骨盤腔内手術を 契機に憩室内部より逸脱し,術後の腸管蠕動低下 と相まって腸石イレウスに至ったものと推察され る. なお,本症例において下部胆管における圧排狭 窄が明らかであったにもかかわらず胆道系酵素に は大きな変動がなく,膵炎症状が主体であった理 由は定かでない.傍乳頭憩室と膵炎との関連を多 数例で検討した報告も,高齢者における急性膵炎 においては特発性と診断する前に傍乳頭憩室の存 在を考える必要がある20)とする一方で,膵炎発症 とは関連が薄いとするものもあり21)22),一定して いない. 今回憩室内結石への対応として,憩室炎急性期 においては穿孔のリスクを鑑みると保存的に対処 したことは妥当であったと考えるが,同時に発見 された巨大卵巣囊腫の存在がその後の対応を難し くした.術前に今一度,内視鏡観察を行い,また その際に結石除去を試みるべきであったと反省し ている. 十二指腸憩室は加齢とともに増加する傾向にあ り,特にそのマネージメントに関しては今後ます ます必要に迫られるケースが増加してくるものと (57)

870

日本消化器病学会雑誌

第112巻

第5号

2877―2882 : 2008 19)松田哲朗,赤木重典:保存的に解除しえた腸石 イレウスの 1 例.臨床外科 47 ; 1493―1496 : 1992 20)Uomo G, Manes G, Ragozzino A, et al : Periampullary extraluminal duodenal diverticula and acute pancreatitis : an underestimated etiological association. Am J Gastroenterol 91 ; 1186―1188 : 1996 21)Lobo DN, Balfour TW, Iftikhar SY, et al : Periampullary diverticula and pancreaticobiliary disease. Br J Surg 86 ; 588―597 : 1999 22)Zoepf T, Zoepf DS, Arnold JC, et al : The relationship between juxtapapillary duodenal diverticula and disorders of the biliopancreatic system : analysis of 350 patients. Gastrointest Endosc 54 ; 56―61 : 2001 23)Rizwan MM, Singh H, Chandar V, et al : Duodenal diverticulum and associated pancreatitis : case report with brief review of literature. World J Gastrointest Endosc 3 ; 62―63 : 2011

1189 : 2010 11)明石 諭,山田行重,杉森志穂,他:十 二 指 腸 憩室からの落下が考えられた真性腸石によるイ レウスの 1 例.日本消化器外科学会雑誌 45 ; 38― 45 : 2012 12)Duarte B, Nagy KK, Cintron J : Perforated duodenal diverticulum. Br J Surg 79 ; 877―881 : 1992 13)井口利仁,吉岡 孝,五味慎也,他:憩 室 内 に 胆汁酸腸石を認めた十二指腸憩室穿孔の 1 例. 日本臨床外科学会雑誌 65 ; 1563―1567 : 2004 14)Atwell JD, Pollock AV : Intestinal calculi. Br J Surg 47 ; 367―374 : 1960 15)Grettve S : A contribution to the knowledge of primary true concrements in the small bowel. Acta Chir Scand 95 ; 387―410 : 1947 16)青木照明,鳥海弥寿雄:消化管結石症.臨牀と 研究 75 ; 1059―1062 : 1998 17)Shocket E, Simon SA : Small bowel obstruction due to enterolith (bezoar) formed in a duodenal diverticulum : a case report and review of the literature. Am J Gastroenterol 77 ; 621―624 : 1982 18)上月章史,篠崎浩治,高里文香,他:幽門側胃 切除術 Billroth II 法再建後,腸石を伴った十二指 腸憩室穿孔の 1 例.日本臨床外科学会雑誌 69 ;

!論文受領,2014 年 10 月 8 日" # # 受理,2014 年 11 月 26 日% $

A case of enterolith ileus secondary to acute pancreatitis associated with a juxtapapillary duodenal diverticulum Shinji MORII, Yoko DOI, Tomoo MAKITA, Shinichiro TAKEDA1), Seiki MIURA, Takaaki KANEKO2), Shuichi SAITO and Shinichiro OKABE1) 1)

Department of Gastroenterology, Matsudo City Hospital Department of Surgery, Matsudo City Hospital

2)

A 63-year-old woman with abdominal pain was referred to our hospital. Her pancreatic enzymes were elevated, and an abdominal computed tomography (CT) scan showed an enlarged pancreas, consistent with pancreatitis, and gas collection containing an impacted stone adjacent to Vater s papilla. This finding raised the suspicion of a duodenal diverticulum. A subsequent ERCP showed a juxtapapillary duodenal diverticulum (JPDD) filled with calculi and pus. The pancreatitis improved with 2 weeks of conservative treatment. Subsequently, the patient underwent resection of the uterus and bilateral adnexa to remove a large ovarian cyst that was also identified on the admission CT scan. On the third postoperative day, she developed abdominal pain and vomiting. CT revealed small bowel obstruction caused by an enterolith expelled from JPDD. Enterotomy was performed to remove the stone. To our knowledge, only three similar cases have been previously reported in Japan.

(58)

[A case of enterolith ileus secondary to acute pancreatitis associated with a juxtapapillary duodenal diverticulum].

A 63-year-old woman with abdominal pain was referred to our hospital. Her pancreatic enzymes were elevated, and an abdominal computed tomography (CT) ...
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