日耳鼻
82-345
ALLERGY
OF
-AN
NOBUHIRO
OKAZAKI, AND
Department
The
of Otorhinolaryngology,
aim of the
tube
identified ed guinea
present
in animals. histologically pigs.
The
study
Allergic when
EUSTACHIAN
M.D.,
TADAMI
TOSHIO
the
relationship
antigen
YAMASHITA,
KUMAZAWA,
M.D.)
histologically
in the Eustachian
allergy
the
allergic
changes
tube and tympanic
had been introduced
between
M,D.
M.D.
University, School of Medicine, Osaka
T. Kumazawa,
was to observe changes
TUBE
STUDY-
Kansai Medical
(Director:
chian
THE
EXPERIMENTAL
into the tympanic
and serous
otitis media
in the Eusta-
cavity
were
cavity
was also discussed.
-22831
A82-0345
耳
管
-実
の 験
ア 的
ア
レ プ
ル ロ ー
ギ
clearly
of sensitiz-
ー
チ-
関 西 医 科大 学耳 鼻 咽 喉 科 学 教 室(主 任:熊 沢忠 躬 教 授) 岡
崎
緒
伸博,山
下
敏
夫,熊
沢忠
実
言
滲 出性 中耳 炎 の 成 因 に お い て耳 管 の しめ る地 位 は きわ
躬
験
方
法
実 験 動 物 と して 体 重300∼400g,プ
ライ エル 反 射 正 常 モ
めて重 要 であ り,そ の 閉 塞 に よ っ て生 ず る とす るい わ ゆ
ル モ ット を 用い た.感 作 抗原 と して結 晶 卵 白 ア ル ブ ミン
るex vacuo theoryが 古 くか ら一 般 に そ の 成 因 と して受
を 用 い これ に 当量 のFreundの
け入れ られ て きた.さ
も のを モ ル モ ッ ト一匹 あた り蛋白 量 と して200ugを
らにそ の成 因 の一つ と して ア レル
完 全 ア ジバ ント を混 ぜ た
モ ッ トの 四 肢 の 皮 下 に 投 与 した.1回
モル
目 投与 後4週 間
ギー説 を と る報 告 が 量 近 か な り見 られ る よ うに な った2) 3)6)8) .こ れ らの 報 告 で は 中耳 腔 の,ま た は 中 耳 腔 に 貯 留
後,同 様 の 方法 で2回 目 の 投与 を行 い,2回目
す る滲 出液 の 変 化 を 主 に 観察 した も の で,滲 出性 中 耳 炎
週 間 後 に ゲ ル 内拡 散 法 に よ る沈 降 反応 に よ り,抗 体価 の
の成因 と して 重 要 と思 われ る耳 管 自体 のア レル ギ ー 変 化
上 昇 を確 認 した も のの み を 用 い て実 験 を 行 った 。
につい て は 動物 実 験 を 含 め て報 告 を 見 ない.Miglets5)は
投与 後1
ネ ンブ ター ル腹 腔 内投 与 に よ る麻 酔 後,水 溶 性 卵 白 ア
感 作 され た 動物 の 中耳 腔 お よ び耳 管 に 抗 原 を 投与 しそ の
ル ブ ミン(約0.1cc)を
組 織学 的 変 化 を 観 察 した が,中 耳 腔 に は著 明 な ア レル ギ ーに よ る変 化 を 認 め た に もか か わ らず,耳 管 自体 に は ほ
に 投 与 した.投 与24時 間 後 に断 頭 し,中 耳 腔,耳 管,鼻
とん ど変 化 を 認 め なか っ た と報 告 した.こ の 報 告 は 耳 管
部,咽 頭 部 を分 離,摘
モル モ ッ トの中 耳 腔 へ 経 鼓膜 的
出 した.
光 顕観 察 の た めに は10%ホルマ
リ ン固定 後,ヘ マ ト キ
はア レル ギ ー に 対す る標 的 器官 とな りえな い のか とい う
シ リンー エオ ジ ン染 色 を 行 った.走 査 型 電 顕 の た め に は
疑 問を い だか せ る.こ の疑 問 を と くた め に 私 共 は 実 験的
Karnovsky固
に耳管自 体 に ア レル ギ ー状 態 を作 る事 を 試 み,ま た そ の
る固 定,脱 水,イ ソ ア ミル ア セ テ ー トに 置換 後,乾 燥,
実 験結 果 よ り滲 出性中耳 炎 の成因 につ い て も若 干 の 考 案
蒸 着 し,日 立 走査 型 電 子 顕 微 鏡SSM2型
を加 え る.
した 。
4-1
定 法 に よ る 固 定,洗滌,オ
ス ミウム に よ
を 用いて観察
82-346
岡 崎 ・他=耳
また,予 備 実 験 と して 中 耳 腔 内 に注 入 した 抗 原 が 確 実 に 耳 管 に 到 達す る事 を 知 る 目的 で 経 鼓膜 的 に 中耳 腔 内に 造 影 剤(エ
ン ドグ ラフ ィ ン)を い れ そ の 排泄 の態 度 を レ
線 的 に 観 察 した.
1979
管 ア レル ギ ー
6の(1)). 耳 管咽 頭 口に も分 泌物 を 認 め た.著 明 な 粘膜 肥 厚 お よ び多 数 の小 円型 細 胞 の浸 潤 を み た.咽 頭 粘膜 も肥 厚 し, 浮腫 お よび 小 円型 細 胞 の 浸 潤 を み た. 以上中 耳 腔,耳 管,咽 頭 部 に 認 め られ た 変化 は局所 ア
実
験
結
レル ギ ーに よ る組 織 学 的 変 化 と思 えた.し か し鼻 部に は
果
予 備 実 験 と して 正常耳 の中 耳 腔 へ注 入 され た 造 影 剤 は 約7時 間 で ほ ぼ完 全 に耳 管 を 介 して排 泄 され る こ とが レ 線 的 に 証 明 され た(図1).こ
鼻 腔,粘 膜 上 皮 お よ び 上 皮 下 組 織 と もに 有意 の変 化を 認 め な か った.
の 結果 は中 耳 腔 に注 入 さ 考
れ た 卵 白ア ル ブ ミン液 が 造 影 剤 に 比 して 粘稠 度 は 異 な る
案
と はいえ,比 較 的 す みや か に 耳 管 を 介 し て 排 泄 され る
動 物 を 用 い,抗 原 に て 感 作後,同 抗 原 を用 い て中 耳腔
事,即 ち 耳 管 粘膜 に抗 原 が す み や か に到 達 す る事 を 明 ら
が 感 作 され る こ とに よ り,中 耳 腔 に滲 出液 を 生 じ,ま た
か に した.
中耳 粘 膜 に ア レル ギ ー変 化 の起 こ る こ とは 報 告 され てい
本 実 験の 対 照 群 と して感 作 して い ない モル モ ットの 中
る.(Smimov7)
Kock4)
Hopp
et al1)).し か し不幸 に
耳 腔 に抗 原 を 注 入 した と ころ 中 耳 腔粘 膜 お よ び耳 管 粘 膜
して この 時 の 耳管 へ の変 化 につ い て は 観 察 が な され てい
等 に 何 らの 肉眼 的 お よび 組 織 学 的 変化 を認 め な か った
な い.
(図2の(2),図3の(2)).
Miglets5)は
感 作 され た サ ル を 用 い て,経鼻 腔 的に 耳
次 に感 作 され た モル モ ットの 中 耳腔 に抗 原 を 注入 した
管 の咽 頭開 口部 の と ころ まで 注 入 針 を入 れ 陽圧 で もって
際 の24時 間 後 の中 耳粘 膜,耳 管 粘膜 の 肉眼 的 お よび組 織
抗 原 を 耳管 内 に噴 霧 し,こ の 抗 原 が 中耳 腔 に確 実 に入 っ
学 的 所見 を 述べ る.
た事 を鼓 膜 を通 して 確認 した.そ の 際 の 中耳 腔 お よび 中
肉眼 的 に 中 耳 腔 に は茶 か っ色 粘 稠 な 分 泌液 が充 満 し,
耳腔 粘膜 に は著 明 な ア レル ギ ー性 変 化 を 認 めた に もかか
中耳 腔 粘 膜 も肥厚 して い た.耳 管咽 頭 口付 近 に も同様 の
わ らず,耳 管 腔 お よび 耳 管 粘 膜 に は ほ とん ど変 化 を認 め
分 泌物 を 認 め た.こ れ を 光 顕 的 に観 察 す る と,分 泌物 に
なか っ た と報 告 して い る.少 な く とも耳 管 粘 膜 に は抗原
は多 数 の 小 円型 細胞 群 が み られ 多 核 白血 球 お よ び好 酸 球
が確 実 に到 達 して い る事 は 確 か で あ る の に もか か わらず
が 主 体 とな り,リ ンパ 球,赤 血球 もみ られ た.中 耳粘 膜 上
耳 管腔 お よ び耳 管 粘 膜 に 変 化 を 認 め なか っ た とす る報 告
皮 は著 しい 変 化 を みな か った が,粘 膜 下 組 織 は肥 厚 し,
は,耳 管 は ア レル ギ ーに 対 す る標 的 器官 とな り得 ないか
浮腫 を 来 し,多 数 の小 円 型 細胞,特 に 多 核 白 血球,好 酸
とい う疑問 を持 た せ た.中 耳 腔 を通 し て抗 原 を 耳管 に到
球,リ
ら しめ た今 回の 実 験 で は,中 耳腔 の み な らず 耳 管 に もア
ンパ 球が 認 め られ た 。 ま た血 管 は 拡 張 し,血 管 内
に は赤 血 球 充 満が み られ た(図2の(1)).
レル ギ ー性 の変 化 を 認 め た.こ の変 化 が 耳 管 自体 のア レ
耳 管 は肉 眼的 に は変 化 を み なか った が,光 顕 的観 察 を
ル ギ ー反応 で あ る事 は,耳 管 の腺 管 の管 腔 内に も小 円型
す る と,耳 管腔 内 には 分 泌 物が 充 満 し,分 泌物 に は多 数
細胞 の浸 潤 な どを 認 め た事 よ り明 白 で あ る.私 共 の実験
の 小 円型 細胞 を 認 め,特 に白 血 球,好 酸 球 お よ び リンパ
結 果 よ り感 作 され た 動 物 の 耳 管 に抗 原 が 到 達 すれ ば必ず
球 が め だ っ た(図3の(1))。
耳 管 自体 に もア レル ギ ー反 応 の生 じ る事,即 ち耳 管 はア
か ったが,上
耳 管 粘 膜 上 皮 に は変 化 が な
皮 下 組 織 は 中 耳粘 膜 程 著 し くない が 肥 厚
し,小 円型 細胞 の浸潤 を見 た.小円 型 細 胞 は リ ンパ 球, 好酸 球,多 核 白血 球 が 主体 で あ った(図4).ま
た耳管
混 合 腺 の 管 腔 に も無 処 置例 では 認 め られ ない 小 円型 細 胞 を認 め た(図5)。
レル ギ ー に 対 す る標 的器 宮 と な りう る事 が 判 明 した. 今回の 実験 は 動物 実 験 で あ り しか も アル サス型 のア レ ル ギ ー に つ い て 行 っ た もの で あ る ことを ふ まえ た上 で, 若 干 臨 床 的 考察 を行 っ てみ る.緒 言 で も触 れ たが 滲出性 中耳 炎 の 成因 を ア レル ギ ー に 求 め る研 究 者 も多 い.彼 ら
走 査 電 子 顕 微鏡 下 で の観 察 で は 無処 置例 で は(図6の
は 滲 出液 の成 分 や抗 原 の 中耳 腔 に 到 る経 路 な どにつ いて
(2))繊毛 細 胞 は 自由に 繊 毛 を 伸 ば して お り,ま たGoblet
主 に検 討 し てい るが,い ず れ も 中耳 腔 そ の もの に ア レル
細 胞 の 表 面 は 規則正 し くな め らか で あ るに 比 して,処 置
ギ ーが 生ず る事 を前 提 と して い る.し か し,耳 管 が ア レ
例 で は 繊毛 細胞の 繊 毛 は 丸 く か た ま る 傾 向 を 示 し,ま
ル ギ ー に対 す る標 的 器 宮 で あ るか らに は 中耳 腔 と同 時に
たGoblet細
耳管 に も ア レル ギー 性 の変 化 が 生 じて い る ことを 当然 考
胞 の表 面 は 不 規 則 か つ 疎 に な っ て い た(図
4-2
岡
崎
論
文
付
図
図1 正常 モ ル モ ッ トに 経 鼓 膜 的 に 造 影 剤(エ ン ドグ ラ フ ィン)を 注 入 した.A は 注入 直 後で,Bは7時 間 後 の レ線 像 で この時 期 に は 鼓 室 内 の造 影 剤 は す で に ほ と ん ど経 耳 管 的 に 排 泄 され てい る. b:中 耳 腔 e:耳 管
図2 ①
感 作 した モ ル モ ッ トの 中 耳腔 に抗 原 を注 入 した24時 間 後 の 組織 で,中 耳 腔 に 分 泌 物 を 認 め 中 耳 粘 膜 下 組 織 は 肥 厚 し,浮 腫 を 来 し多 数 の 小 円型 細 胞 を認 め る. ま た,血 管 は 拡 張 して い る-
②
感 作 して い な い モ ル モ ッ トの 中 耳腔 に抗 原 を注 入 した 時 の 中耳 粘 膜 組 織 像. C:中 耳 腔 E:粘 膜 上 皮 LP:粘 膜 下 組 織 B:中 耳 骨 包 S:分 泌物
岡
崎
論
文
付
図
図3 (1)感 作 した モル モ ッ トの 中 耳腔 に 抗 原 を 注 入 した24時 間 後 の 耳 管 の 組 織 像 で, 耳 管 腔 内に は 分 泌 物 が 充 満 し,分 泌物 に は 多数 の 小 円型 細 胞 を 認 め る. (2)感 作 して い な い モ ル モ ッ トに 抗 原 を注 入 した 際 の耳 管 粘 膜 組 織 像. C:耳 管 腔 E:粘 膜 上 皮 LP:粘 膜 下 組 織 G:耳 管 混 合 腺
岡
崎
論
文
付
図
図4 感 作 した モ ル モ ッ トの 中耳 腔 に抗 原 を注 入 した24時 間 後 の 耳 管 粘 膜 で,上 皮 下 組 織 は 肥 厚 し 小 円型 細 胞 の浸 潤 が あ り,そ の 中に リ ンパ 球,好 酸 球,多 核 白血 球 等 が 存在 した. C:耳 管 腔 E:粘 膜 上 皮 LP:粘 膜 下 組 織
図5 感 作 した モル モ ッ トの 中耳 腔 に 抗 原 を 注入 した 際 の24時 間 後 の 耳 管 粘膜 下 組織 像 で,耳 管 混 合 腺 の管 腔 に 小 円 型 細胞 を 認 め た. LP:粘 膜 下 組 織 G:耳 管 混 合 腺 C:管 腔
岡
崎
論
文
付
図
図6 (1)感 作 した モル モ ッ トの 中 耳腔 に抗 原 を 注入 した際 の24時 間 後 の 耳 管 粘膜 の 走 査 電 顕 像 で,繊 毛 細 胞 の 繊 毛 は丸 く固 ま る傾 向 を示 す. (2)感 作 して いな い モル モ ッ トに抗 原 を 注 入 した 際 の走 査 電 顕 像.
Ci:繊
毛
日耳 鼻
岡崎・ 他=耳 管 ア レル ギ ー
えるべ きで あ る.さ らに極 言す れ ば 耳管 の み の ア レルギ ー性変 化 で 耳 管 に 閉 塞 が お こ り二次 的 に 中 耳腔 に滲 出液 が 生 じ る とい う形 の ア レル ギ ー に よ る滲 出性 中耳 炎 の 可
82-347
4) Koch H:
Allergical
Investigation
能性 も あ るわ けで あ る.
Allergic Middle Ear Effusion. Laryngoscope, 1355-1384, 1973.
ま
と
6) Senturia
め
時 に生 ず る耳 管 の変 化 を 光 学 顕 微 鏡 お よ び 走 査型 電 子 顕 微 鏡 で観 察 した.耳 管 内に は好 酸 球 等 の 小 円型 細 胞 を含
胞 浸潤 を 認 め た.こ れ らは 耳 管 自体 のア レル ギ ー 反応 と
Allergic Manifestations
bes et histolystats
de l'oreille
思わ れ る所見 で あ り,即 ち 実 験 的 に 耳 管 に ア レル ギ ー状
an Approach to Management. 751-758, 1975. 本 論 文 の 要 旨 はinternational
Media-An
tion
and
allergy
及 び 第4回
Immune Theory-. 1954. 2) Jones M F:
Laryngoscope,
4-3
of
the
nose
Acta
Otitis Media:
Laryngoscope, 85:
symposium and
of
paranasal
臨 床 耳 科 学 会 総 会 に 於 て 発 表
infec-
sinuses.
し た.
本 研 究 は 文 部 省 科 学 研 究 費 補 助 金 の 援 助 を 受 け た.
Manifestations
of Allergy
in the
Role of Allergy in Otology. AMA
Arch. Otolaryng,
humaine.
74: 1149-1159,
Ear. Ann. Otol. 47: 910-916, 1938. 3) Jordan R E:
in Oto-
70: 287-297, 1960.
Otolaryng., 26: 12-17, 1938. 8) Viscomi G J: Allergic Secretory
態 を生 ぜ し め う る事 を 証 明 し た.
参 考 文 献 E S et al.: Serous Otitis
83:
7) Smirnov P P: Experiences visant a obtenir 'anaphlaxie des anima ux au moyen des microl
む 滲出 液 が充 満 し.耳 管 粘 膜 下 は 肥 厚 し,多 数 の好 酸 球 の細 胞浸 潤 を 認 めた.ま た 耳 管 混 合 腺 々管 に も小円 型 細
B H:
logic Disease. Laryngoscope,
感作 され た モル モ ッ トの 中耳 腔 に 抗 原 を 注入 し,そ の
1) Hopp
of Chronic
Otitis. Acta Otolaryng., Suppl. 62: 1-201, 1947. 5) Miglets A: The Experimental Production of
55: 363-368, 1952.
(原 稿 受 付 昭 別刷 請 求 先
〒570守
口 市 文 園 町1番
和53.10.6日) 地
関西 医科 大 学 耳 鼻 咽 喉 科 学 教 室 岡
崎
伸博