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長 期 臥 床 と痴 呆 に 関 す る 研 究 稲垣
俊 明
山本
俊幸
野倉
一也
橋詰
良夫 *
新美
達司
三竹
重 久 **
小鹿
幸 生 **
山本
正 彦 **
名 古屋 市厚 生院 の 附属 病院 (以下病 院 と略 す) と特 別養 護老 人 ホ ー ム (以下 特養 と略 す) の60歳 以上 の高齢 者 の長 期臥 床 と痴呆 につ いて検 討 し, 以下 の結 果 を得 た. 1) 長 期臥 床 は42.6%み られ, 加 齢 とと もに高率 とな り, 性別 で は女性 に高 率 であ った. 長期 臥床 例 の 大部 分 は神経 疾患 が 直接 な い し関接 に関与 し, その なか で脳血 管 障害 が最 も高率 で あ った. 2) 長 期臥 床例 の痴 呆 の 出現率 は82.8%で あ り,痴 呆 の程 度 は高 度 が高率 にみ られた. 痴呆 の種類 は脳 血管 性痴 呆 (以下VDと
略 す) 45.1%ア ル ッハ イ マー型痴 呆 (以下DATと
略す) 23.2%,
混 合型 痴呆 (以
下MIXと 略す) 19.5%お よび その他 (以 下 Others と略 す) が12.2%で あ った. 特 にDATは の誘 因 とな り, VDは 長 期 臥床 の結 果 として発症 す る例 の多 い事 が示 唆 され た.
長期 臥床
3) 長 期臥 床 の予防 に は早期 に リハ ビ リを開 始 し, 早 期離 床 に努 め る事 が重要 で あ る. 長期 臥床 例 で経 管栄 養 を必要 とす る症 例 は約20%で,
全例 痴呆 を認め た. 従 って, 長期 臥 床 の ター ミナル ケアで は経 管
栄養 に つい ての研 究 が重要 で あ る事 が示唆 された. Key words:
長 期 臥床, 痴呆, 脳血 管 障害, リハ ビ リテ ーシ ョン, 経 管 栄養
緒
下 病 院 と略 す)
言
に入 院 中 お よび 同 院 の 特 別 養 護 老 人
ホ ー ム (以 下 特 養 と略 す) 入 所 中 で, 60歳 以 上 で3カ
近 年, 高齢 人 口の増 加 に伴 い急 速 に高齢 化社 会 を迎
月 以 上 の 臥 床 例 を 対 象 と した.
さ ら に, 平 成3年2月
えつ つ あ る. 厚生 省 に よれば, 昭 和60年 の在宅 痴呆 性
時 に 臥 床 例 に つ い て, 臥 床 の 有 無 を 再 調 査 し た. 長 期
老人 は59万 人 で あ り, 寝 た き り老 人 は約60万 人 と推 定
臥 床 お よ び 痴 呆 の 判 定 は看 護 者 の 意 見 を 参 考 に し, そ
され, うち22万 人 は在 宅 で ケア を受 けて いて, 今後 さ
の 上 で 神 経 学 的 診 察, 病 歴 聴 取 (診 療 録 よ り),
日常 生
らに増加 す る と推 定 され てい る1)2). このような痴呆性
活 動 作 能 力 (以 下ADLと
老人, 長 期臥 床 の老人 の増 加 は医学 的 に も社会 的 に も
式 痴 呆 テ ス ト, Hachinski
重大 な問題 とな って きて い るが, 長 期 臥床 と痴 呆 との
天 秤 法 お よ び 頭 部CTを
関連 につ い ての詳 細 な報告 は な い. 従 って, 長 期 臥床 と痴呆 の実態 を解 明す る事 は極 め て重要 であ る.今 回,
つ い て は軽 度 は 何 と か 座 位 と食 事 が 可 能 な も の, 中 等
老人 施設 で長 期臥 床 となる原 因疾患, 長 期 臥床 の痴 呆 の 出現率 ・種 類 ・程度, 長 期臥 床例 に対す る リハ ビ リ
痴 呆 の 程 度 は 吉 村, 朝 長 の 判 定 基 準4)に 従 い, 長 谷 川 式
テ ーシ ョン (以下 リハ ビ リと略 す) の効果 と栄 養管 理
0∼5点
につ いて検 討 した の で報告 す る.
略 す), DSM-III-R3), の Ischemic
長 谷川
score,
松 下の
用 い 診 断 した. 臥 床 の 程 度 に
度 は 食 事 の み 可 能 な も の, 高 度 は 全 面 介 助 と規 定 し た.
痴 呆 テ ス トで15.5∼20点
が 軽 度, 5.5∼15点
が 中 等 度,
尚, 各 統 計 計 算 は χ2検定 を 用 い, p