敵 対 行 動 に対 す る ベ ン ゾジ アゼ ピ ン系 お よび 非 ベ ン ゾジア ゼ ピン系抗 不 安 薬 の作 用 特 性 吉 村

裕 之*，

渡 辺

浩 毅**

愛 媛 大 学 医 学部 附 属 実験 実 習機 器 セ ン ター*， 国立 療 養 所 愛 媛 病 院** (1991年11月13日

〔 特 〕)

要 約:居 住 者 と侵 入 者 の 設 定 に よ り惹 起 され る雄 マ ウ ス間 の敵 対 行 動 を指 標 に， ベ ン ゾ ジア ゼ ピ ン系抗 不 安 薬 のdiazepam(0，1，2．5，5mg/kg，p．o．)と 2．5，5，10mg/kg，p．o．)の

セ ロ トニ ン 関 連 抗 不 安 薬 のtandospirone(0，

効 果 を比 較検 討 した ． 本研究では， 攻 撃 側 と被 攻 撃側 の 二者 間 の相 互 関 係 を 含

め た薬 効 解 析 を試 み ， 攻 撃 側 動 物 と被 攻撃 側 動 物 に薬 物 を投 与 した ．攻 撃 側 の 居 住 マ ウ ス に これ らの 薬 物 を投 与 す る と ，侵 入 マ ウ ス に対 す るattackbiteは マ ウ ス に薬 物 投 与 した場 合 ，diazepam(2．5，5mg/kg)が た の に対 して ，tandospironeは

無 処 置 居 住 マ ウ スの 攻 撃 性 を有 意 に増 加 し

有 意 な攻 撃 性 の 変 容 を惹 起 しな か っ た ． ま た ，diazepamを

た居 住 マ ウ ス あ る い は 侵 入 マ ウ ス で は ，locomotionお tandospironeは

用 量 依 存 的 に抑 制 され た ． しか し， 被 攻撃 側 の侵 入

よびrearingの

投 与 され

回 数 が 有 意 に低 下 して い た ．

， い ず れ の 用 量 に お い て もlocomotionやrearingに

対 す る抑 制 効 果 は 認 め ら れ

な か った ． こ れ ら の 実験 成 績 お よび 同様 の 実 験 系 を 用 い た 既 報 の 向精 神 薬 の 作 用 特 性 か ら類 推 す る と ， tandospironeは

ベ ン ゾ ジ アゼ ピ ン系 抗 不 安 薬 よ りむ し ろ抗 うつ薬 に近 い挙 動 を示 す よ うに思 われ る．

対 す る二 者 間 の相 互 関 係 に 依 存 して お り， 攻 撃 側 の居 住 緒

言

行動 薬 理 学 の領 域 に お いて ， 実 験 動 物 の 攻 撃 性 に 対す

マ ウス に薬 物 を投 与 した 場 合 の み な らず ， 被 攻 撃 側 の 侵 入 マ ウス に投 与 した場 合 に も変 容 す る． す で に報 告 して

る静 穏 ・馴 化 効 果 は 向 精 神 薬 の 前 臨 床 評 価 法 と して繁 用

い る よ うに ，ethylalcoholやchlordiazepoxideを

され て お り，種 内闘 争 を 惹 起 させ るた め に 種 々の 方 法 が

ウス に投 与 す る と そ の攻 撃 性 は 著 明 に 抑 制 され るが ， 侵

居住 マ

しか しなが ら， そ の 多 くは ， 攻 撃

入 マ ウス に投 与 す る と， 逆 に ， 無 処 置 居 住 マ ウ スの攻 撃

行動 を誘 発 させ る手 段 に 電 撃 シ ョ ックの よ うな 嫌悪 刺激

性 が 増 強 され る7・8}． この 現 象 は ， 向 精 神 薬 の うち と く

や 条件 反 応 の よ うな複 雑 な人 為 的 操 作 を 用 い て お り，行

に抗 不安 薬 に特 徴 的 にみ られ ， 抗 うつ 薬 を 居 住 マ ウス に

動 の解 析 方 法 も直 接 的 な攻 撃 行 動 の み を 指 標 とす るな ど

投 与す る とそ の攻 撃 性 は 抑 制 され るが ， 侵 入 マ ウス に投

考 案 され て きたL2㌧

問 題 を含 ん で い る ．著 者 らは ，・ 誘 発 手 段 と薬 物 効 果 との

与 して も居 住 マ ウ ス に行 動 変 容 は み られ な い8)．ま た ，

間 の錯 綜 した問 題 を解 決 す るた め に ， 行 動 生 物 学 的 視点

抗 精 神 病 薬 は ，居 住 マ ウ スの 攻 撃 性 を 抑 制 す る もの の 闘

か ら居 住 者 と侵 入 者 の 設 定 に よ る新 しい 種 内 闘 争 の モ デ

争場 面 に おけ る 自発 運 動 量 の 著 明 な 低 下 を 伴 い ， 侵 入 マ

ル を 開発 し， エ ソ ロジ ー の手 法 を 適 用 す る こ とに よ り薬

ウ ス に投 与 して も居 住 マ ウ ス の 攻 撃 性 は 変 わ らな い ．

物 作用 の 詳細 な行 動 学 的 解 析 を 試 み て きた3∼61・ こ の方 法は ，雌 雄 動 物 を 同 居 させ 生 活 居 住域 を 確 立 さ せ た 後 ，新 奇 な 同種 雄 性 動 物 を そ の 居 住 域 に 侵 入 させ る もの で ，実 験 動 物 化 され た マ ウ ス， ラ ッ ト， リス ザ ル な

従 って ，攻 撃 側 あ る いは 被 攻 撃 側 に 薬 物 投 与 した場 合 の 敵 対 行 動 の変 容 を検 討 す る こ とは ， 抗 不 安 作 用 の 検 出 に 有 用 と考 え られ る ． そ こで， 今 回 ， こ の雄 マ ウ スの 敵 対 行 動 を 指標 と して

どに お い て野 生 種 の行 動 様 式 と一 致 した 種 特 異 的 な攻 撃

新 規 抗 不 安 薬 と して 開 発 され たtandospironeの

作用特

行動 が観 察 され る ― また ， 闘 争 場 面 に み られ る行動 は敵

性 をdiazepamと

，piri-

*〒791-02愛 **〒791-02愛

midinylpiperazine誘

媛 県温 泉 郡 重 信 町 志 津 川454 媛 県 温 泉 郡 重 信 町 横 河 原366

比 較 検 討 した ．tandospironeは

導 体 の ひ とつ で あ り， 筋 弛 緩 作 用

や催 眠 作 用 の少 な い セ ロ トニ ン関 連 抗 不 安 薬 と され る9)．

と した ． 実 験 は ， 行 動 お よ び 薬 物 作 用 の 日 内 変 動 を 考 慮

実

験

方

法

し， 午 後1時

1．動 物

か ら4時

まで の一 定 時 間 内 に実 施 した ．

3． 薬 物 お よ び 投 与 方 法

実 験 に は， 市 販ICR系

雌 雄 マ ウス(日 本 ク レア)を 愛

薬 物 は ，tandospirone(SM-3997，

住 友)お

媛 大 学 医 学 部 附 属 動 物 実 験 施 設 で 繁殖 させ ， そ の一 代 目

diazepam(住

の もの を 使 用 した ． 動 物 は ， 透 明 ポ リ カ ー ボ ネ ー ト製

mg/kg)は0．9%注

ケ ー ジ(21×32×14cm)内

diazepam(1，2．5，5mg/kg)は0．5%carboxyme-

に 飼 育 し，床 敷 に は ホ ワ イ

トフ レ ー ク(日 本 ク レア)を 用 い た ．全 実 験 期 間 を 通 じ

友)を

よ び

用 い た ．tandospirone(2．5，5，10 射 用 生 理 食 塩 水 に 溶 解 さ せ ，

thylcellulose(CMC)で

懸 濁 化 して そ れ ぞ れ 経 口投 与 し

て，動 物 に は 固 形 飼 料 お よび 水道 水 を 自由 に摂 取 させ た ．

た ． 各 薬 物 ご と に10匹

動 物 飼 育 室 は ，室 温23±1℃ ， 明暗 周 期 を12時 間(明 期

スを 用 い た ． 各 用量 の薬 物 お よび対 照 の注 射 用 生 理 食 塩

は 午 前7時 か ら 午後7時

水 お よ びCMCは

まで)に 保 った ． な お ， 本 実 験

ず つ2群

の居 住 マ ウス と侵 入 マ ウ

， 実験 計 画 法 に従 っ て無 作 為 の順 序 で

は 愛媛 大 学 医 学 部 動物 実験 委 員 会 の承 認 の も と， そ の実

同 一 マ ウ ス に 対 し て1週

験 指 針 を 遵 守 して な され た こ とを 付記 す る ．

居 住 マ ウ ス と 侵 入 マ ウ ス は3日

2． 方 法

い て1週

約6週 齢 の 雌 雄 マ ウスー 対 を約5週

間 同居 飼 育 させ ，

間 に2回

間 に1回

投 与 した． す なわ ち， あ る い は4日

の間 隔 を 置

遭 遇 させ る が ， 薬 物 処 置 は 居 住 マ ウ ス

か 侵 入 マ ウス の いず れか で あ り， 同時 に薬 物 を 投 与 す る

仔 を 有 す る雄 マ ウス の み を居 住 マ ウス と して使 用 した ．

こ と は な か っ た ． 敵 対 行 動 の 観 察 は ， 薬 物 を 投 与 後30分

侵 入 マ ウ スに は ， 離乳 後 か ら雄 のみ で群 居 飼 育 した 約8 ∼9週 齢 の マ ウス を用 い た ．居 住 マ ウス と侵 入 マ ウ ス と

に 行 っ た ． な お ， こ れ ら の 実 験 は ，singleblinddesign

の 組 合 せ は 無 作 為 に 行 な い ， 実 験 期 間 中 は 変 更 しな

い て知 ら されず ，盲 検 性 を計 っ た ，

か った ． な お ， 本研 究 で は ，実 験 を始 め る前 に 別 の 侵 入

4． 統 計 処 理

マ ウス を 用 い て3回 予 備 実 験 を 行 い ，30秒 以 内 に 安 定 し て 咬み つ く居 住 マ ウス のみ を対 象 と した．

で 行 わ れ ， 行 動 解 析 終 了 ま で 実 験 者 は 投 与 した 内 容 に つ

本 実験 で は ，薬 物 効 果 を個 体 内変 動 か ら ノ ンパ ラ メ ト リ ッ ク 法 を 適 用 す る こ と に よ り統 計 的 に 検 出 した ． す な

敵 対 行動 の観 察 は ， まず ，居 住 マ ウ スの ホ ー ム ケ ー ジ

わ ち ，各 行 動 要 素 ご と にFriedmanの

分散分析を行ない，

内 か ら同居 して い る雌 マ ウスお よ び仔 を一 時 的 に 取 り除

有 意 差 が 認 め られ た 場 合 に の み 対 照 溶 液 投 与 時 と 各 用 量

き，侵 入 マ ウス を一 匹 導 入 す る と 同時 に ビデ オ レコ ー ダ

の 薬 物 投 与 時 と の 対 間 比 較 をWilcoxon'smatched-pairs

に よる記 録 を 開始 した ．最 初 に 居 住 マ ウ スが 咬 み つ い て

signed-rankstestに

よ り行 っ たID．

か ら5分 間 を行 動 解 析 の対 象 と し， も し， 居 住 マ ウ スが 実

侵 入 マ ウス を導 入 した 時 点 か ら5分 間 以 内 に 咬 み つ か な か った 場 合 に は ， その5分 間 の 行 動 を 解 析 対 象 と した ． 行 動 解 析 は ，録 画 画 面 を 観 察 しな が らエ ベ ン トレ コ ー ダ を操 作 す る こ と に よ り行 った ． 本 研 究 で は ， す で に報 告 して い る 行動 目録1ωに 従 って ，9項

目の 行 動 要 素 に つ

験

結

果

1． 居 住 マ ウ ス の 攻 撃 行 動 に 対 す る 抗 不 安 薬 の 影 響 1)薬

物 を 居 住 マ ウ ス に 投 与 した 場 合(図1)

diazepamは

，sidewaysposture(X2=9，64，P〈0．05)

お よ びattackbite(X2=9．11，P