日耳 鼻

95-65

Hunt症

候 群 の保 存 的治 療 ス テ ロ イ ド大 量 投 与

神戸 大 学医 学部 耳鼻咽 喉 科学教 室(主 任:天 津睦郎 教授) 木

西

實,細

見

英

男,天

CONSERVATIVE

MINORU

KINISHI,

Based

M. D., HIDEO

rate.

with those

真

OF HUNT

HOSOMI,

employed

that

of a group

in 71 cases of Hunt

of 36 patients

AMATSU,

School of Medicine,

edema

M. D.

Kobe

as well as ischemia and dextran

patients

dextran

lead to both and reported

a

with Bell's palsy and Hunt

(SD therapy).

syndrome,

who had been treated

薫

M. D.

high doses of cortisone

or low-molecular

池

SYNDROME

KOIKE,

In the past 5 years, we have been treating

was administrated

琴,小

M. D ., MUTSUO

Kobe University

of Bell's palsy

Stennert

with a high dose of steroids

SD therapy

郎,谷

M. D. and KAORU

of Otolaryngology,

and hypoxia,

high recovery syndrome

TANI,

on the pathophysiology

compression

睦

TREATMENT

MAKOTO

Department

津

and the results were compared

with orally

administrated

low-dose

steroids. All patients

with incomplete

In cases of complete In contrast,

palsy, 62% of patients

29% of the patients

These results oral steroid

palsies recovered

indicate

therapy,

treated

completely

with complete

with incomplete

On the basis of this study, oral steroids palsy develops.

recovered

regardless

with orally administrated

that for patients

while patients

completely,

of the mode of treatment.

when treated steroids

palsy SD therapy

palsy recover

In these latter cases, we now believe that SD therapy

completely.

is more effective than

completely

are best used in cases of incomplete

with SD therapy.

recovered

with oral steroids.

palsy unless complete

should be started

immediate-

ly.

Key

words:Hunt症

候 群,顔

面 神 経 麻 痺,保

存 的 治 療,ス

は じ め に Ramsay

Hunt症

頻 度 は,Bell麻

候 群)の

発症

痺 に 次 い で 多 く,両 者 で 末 梢 性 顔 面 神 痺や

候 群 の 保 存 的 治 療 と し て ス テ ロ イ ド剤 を 中 心

と した 内服 治 療 を 行 っ て きた が,そ

の 治療成 績 は満足

すべ き結 果 で は な か っ た. 1979年Stennertは,抗

A95-0065-91595

療 法 を実 施 し,良 好 な 治 療 成 績 を 報 告 し た1).こ の 治 療

候 群(以 下,Hunt症

経 麻 痺 の 大 部 分 を 占 め る.著 者 等 は従 来,Bell麻 Hunt症

テ ロイ ド

炎 症,抗 浮 腫 作 用 を 目 的 と し

法 の 好 成 績 か ら,著 者 等 は1984年7月

以 降Bell麻

痺の

保 存 的 治 療 と して 低 分 子 デ キ ス トラ ン を点 滴 基 剤 と し た 大 量 の ス テ ロ イ ド剤 に よ る点 滴 静 注 治 療(ス ド-デ キ ス トラ ン点 滴 静 注 治 療,以

下SD治

テ ロイ

療)を 実 施

し,良 好 な 治 療 成 績 を 報 告 し た2)3). Hunt症

候 群 は水 痘帯 状疱 疹 ウイ ルス感 染 に よ る と

さ れ,Bell麻

痺 と は病 因 が 異 な る が,顔 面 神 経 麻 痺 を

て従 来 用 い られ て い た 量 よ り は る か に 大 量 の ス テ ロ イ

きた す 主 な病 態 は ウ イ ル ス 感 染 の 結 果 生 じ る炎 症 性 浮

ド剤 を微 小 循 環 改 善 剤 と と も に 点 滴 静 注 す る保 存 的 治

腫 と微 小 循 環 障 害 で あ る と 考 え,Hunt症

候群 に も

95-66

木 西 ・他=Hunt症

表1

ス テ ロ イ ドー デ キ ス トラ ン治 療(SD治

Bell麻 痺 と同 様 にSD治 群 に対 す るSD治

候 群 の保存 的治療

療)

療 を 行 っ て き た.Hunt症

1992

表2

顔面 運動 評価 法

候

療 の 治 療 成 績 を,従 来 行 っ て き た ス

テ ロ イ ド剤 を 中 心 とす る 内 服 治 療(以

下,ス

テロイ ド

準 を 述 べ る. 1.

内 服 治 療 と比 較 し報 告 す る.

麻痺 の程度

顔 面 運 動 の 評 価 法 と し て,May-細 治 療 方 法 1.

SD治

表1に ン)を

を加 え た10項 目 の 顔 面 運 動 に つ い て10点,5点,0点 を あ た え る3段 階 評 価 を 行 い100点 満 点 と し,顔 面 運動

療

示 す よ うに,ス

テ ロ イ ド剤(ヒ

外 来 通 院 で500mg(プ

125mg)か

ら100mgま

ドロコル チ ゾ

レ ゾニ ゾ ロ ン対 応 量

で1週

間 か け て 漸 滅 しな が ら点

滴 静 注 投 与(総 投 与 量1500mg,プ 375mg)し,点

レ ゾニ ゾ ロ ン対 応 量

滴 基 剤 は低 分 子 デ キ ス トラ ン500mLを

用 い,複 合 ビ タ ミ ン製 剤 やATP製

小 循 環 改 善 剤(ペ ン トキ シ フ ィ リ ン),ビ

B12製

剤(メ

コバ ラ ミン),ATP製

リ ン酸 ナ ト リ ウ ム),循

剤(ア

環 改 善 剤(カ

お,症

ク ロ ビ ル)を1週 2.

タ ミン

デ ノ シ ン三

リ ジ ノゲ ナ ー ゼ)

を 内 服 投 与 し,内 服 薬 は 治 癒 を 得 る ま で,ま 月 間 継 続 投 与 した.点

た は6ヵ

滴 静 注 の 所 要 時 間 は2-3時

例 に よ っ て は 抗 ウ イ ル ス 製 剤(ア

シ

間 点 滴 静 注 投 与 した.

レ ゾニ ゾ ロ ン対 応 量60mg)か

ら1週

な が ら 内 服 投 与(総 投 与 量26mg,プ タ ミンB12製

剤,循 環 改 善 剤 はSD治 た は6ヵ

っ て20%以 度)麻

痺,麻

レ ゾ ニ ゾ ロ ン対 応 剤,ATP製

タ ミ ンB12製

剤,循

痺 の 程 度 が 軽 度 で 全 経 過 にわ た

痺 の 程 度 が 高 度 で15%以 度)麻

完 全 麻 痺 症 例 は,さ Exitability,以

下NE)を

1)

NE(+)群(左

2)

NE(+/-)群(左

ら に 神 経 興 奮 性(Nerve

に 分 類 した.

右 差 が5Vま

満)

た は3.5mA以

上) 3)

NE(-)群(消

2.

治癒 状 態の判 定

失)

上 み られ,か

攣 運 動,な

つsynkinesis,

croco-

ど の い ず れ の 後 遺 症 につ いて

も顕 著 な もの が み られ な い もの を 治 癒 と し,そ れ 以外 を非 治 癒 と分 類 した.

環 対 象 症 例

療 群 と同 様 に 治 癒 す る まで,ま

1980年1月

か ら1989年12月

療 したHunt症

月 間 継 続 投 与 した.

ま で の10年 間 に 当 科 で治

候 群 症 例187例 の う ち,ス テ ロ イ ド剤 が

投 与 さ れ た 症 例 は134例(SD治 ド内 服 治 療 群;46例)で

治 癒判 定 法

わ れ が 行 っ て い る 判 定 法 に よ っ た.こ

た は3.5mA未

右 差 が5Vま

剤,ATP製

れ

麻 痺 発 症 後1週

こにその判 定基

鮮 例107例(SD治

顔 面 神 経 麻 痺 の 程 度 お よ び 治 癒 状 態 の 判 定 は,わ

下 の顔面運動 と

痺 と分 類 し た.

初 診 時 お よ び1週 後 に検 査 し

た 結 果 に よ り,次 の3群

dile tears,痙

間か け て漸減 し

面 神 経 麻 痺 発 症 後1週 以 内

上 の顔 面 運 動 が み られ る もの を不 完 全(軽

顔 面 運 動 が90%以

ス テ ロ イ ド剤(ベ タ メ サ ゾ ン)を 外 来 通 院 で6mg(プ

改 善 剤 を 内 服 投 与 した.ビ

の 新 鮮 例 に つ い て,麻

間

ス テ ロ イ ド内 服 治 療

量260mg)し,ビ

を%表 示 し た(表2)4)5).顔

な る もの を 完 全(高

剤 を併 用 した.同 時

に,微

と した.な

見 変 法 に軽 閉眼

療 群;88例,ス

あ っ た.こ

の うち,顔

以 内 に 治 療 を開 始 し たHunt症 療 群;71例,ス

テ ロイ 面神経 候 群新

テ ロ イ ド内 服 治 療 群

日耳 鼻

木 西 ・他=Hunt症

表3

候群 の保 存的 治療

95-67

対象症 例

36例)を 対 象 と し た(表3).こ

表4

の 中 に は,糖

尿 病 を合

治療 成績

1.

SD治

療群

2.

ス テ ロ イ ド内 服 治 療 群

併 した 症 例 も含 まれ て い る. 1.

SD治

療群

71症 例 の 麻 痺 の 程 度 に よ る 分 類 で は,不 19例,完

完 全麻痺 例

全 麻 痺 例52例 で あ っ た.完 全 麻 痺 例 のNEの

程 度 に よ る分 類 で は,NE(+)群28例,NE(+/-) 群10例,NE(-)群14例

で あ っ た.男

例 で あ り,年 齢 分 布 は3歳 (標準 偏 差21.4)で

性37例,女

性34

か ら84歳 ま で,平 均 は46歳

あ っ た.抗

ウ イ ル ス剤 を併 用 投 与 し

た症 例 は29例 で あ っ た. 治 療 開 始 時 期 は,不 差1.34),完

完 全 麻 痺 例 で 平 均3.4日(標

全 麻 痺 例 で 平 均3.8日(標

あ っ た.完 全 麻 痺 例 のNEの

SD治

で それ ぞれ平

準 偏 差1.81),3.6日(標

田(標 準 偏 差1.86)で

療 開 始 時 期 は,不

全 麻 痺 例 のNE各

間 お よ び 不 完 全 麻 痺 例 とNE各

群の

群 症 例 の間 に統 計 学

完 全麻痺 例

全 麻 痺 例24例 で あ っ た.完 全 麻 痺 例 のNEの

で あ っ た.男

43歳(標

準 偏 差17.8)で

治 療 開 始 時 期 は,不 差2.73),完

か ら82歳 ま で,平

均年 齢 は

あ っ た. 準偏

準 偏 差2.12)で

程 度 に よ る 分 類 で は,NE

(+)群,NE(+/-)群,NE(-)群 準 偏 差0.99),4.0日(標 あ っ た.治

SD治

で それ ぞれ 平 準 偏 差2.1),3.6 療 開 始 時 期 は,SD治

療 と同 様 に 不 完 全 麻 痺 例 と完 全 麻 痺 例 の 間,完

全麻 痺

療群

療 群71症 例 の う ち52例(73%)が

治 癒 した.抗

ウイ ル ス 剤 を併 用 投 与 した29例 で は21例(72%)が

治

癒 し た. 不完 全麻痺 例

19例 全 例 が 治 癒 し,治 癒 率 は100%で で の 所 要 期 間 は 平 均27.5日(標 2)

全 麻 痺 例 で 平 均3.7日(標

日(標 準 偏 差1.78)で

性17

完 全 麻 痺 例 で 平 均4.2日(標

あ っ た.完 全 麻 痺 例 のNEの

均3.1日(標

性19例,女

癒 した 症 例 の み を も って 治 癒 率 を 算

出 し,治 療 方 法 別 に 示 した(表4).

1)

程 度 に よ る 分 類 で は,NE(+)群8例,NE(+/-)

例 で あ り,年 齢 分布 は9歳

治 療 成 績 治 療 成 績 は,治

SD治

ス テ ロ イ ド内 服 治 療 群

群6例,NE(-)群10例

療 群 と ス テ ロ イ ド内 服 治 療 群 の 間 で も治 療 開

1.

36症 例 の 麻 痺 の 程 度 に よ る分 類 で は,不 12例,完

群の

始 時 期 は 統 計 学 的 に 有 意 差 を み とめ な かっ た.

完

的 有 意 差 をみ と め な か っ た. 2.

群 の間 お よび不 完 全 麻 痺例 とNE各

準 偏 差2.01),3.9

あ っ た.治

全 麻 痺 例 と完 全 麻 痺 例 の 間,完

例 のNE各

間 に統計 学的有 意差 をみ とめなかっ た.

準 偏 差1.95)で

程 度 に よ る 分 類 で は,NE

(+)群,NE(+/-)群,NE(-)群 均3.8日(標

準偏

あ っ た.治 癒 ま

準 偏 差10.1)で

52例 の う ち33例 が 治 癒 し,治 癒 率 は62%で NEの

あ った.

完全麻 痺例

程 度 別 に は,NE(+)群

率96%で

あ つ た.NE(+/-)群

治 癒 率 は60%で

あ っ た.NE(-)群

治 癒 に お わ り,治 癒 率 は0%で

で は,10例

あ った.治

癒

中6例,

で は14例 全 例 が 非 あ っ た.治 癒 し な かっ

た19例 の 症 状 固 定 時 の顔 面 運 動 は 平 均67%(標 18.2)で

あ っ た.

で は28例 中27例,治

準偏差

癒 し た33例 と治 癒 し な か っ た19例

95-68

木 西 ・他=Hunt症

の 治 療 開 始 時 期 は,そ 4.1日(標

れ ぞ れ3.9日(標

準 偏 差1.90)で

考 Hunt症

よ びNE各

1992

準 偏 差2.25),

あ っ た.

治 療 効 果 に つ い て の 統 計 学 的 検 討 で は,不 例 と完 全 麻 痺 例 の 間,お

候群 の保存 的治 療

完全麻 痺

群 症 例 の 間 に統 計

掌 的 有 意 差(直 接 確 率 計 算 法p