〔639〕
マ イ ク ロ波 全 身暴 露 の ラ ツ ト血 漿 副 腎皮 質刺 激 ホ ルモ ン, 甲状 腺 刺 激 ホル モ ンお よび 甲状 腺 ホル モ ンへ お よぼす影 響 井
奈
波
良
一*1,渡
辺
信
*1金沢 大 学 医 学部 公 衆 衛 生学 教 室
Effects
哉*1,岡
晃*1,諸
治
隆
嗣*2
,*2財 団 法 人東 京 都 精 神 医学 総 合 研 究所 精 神 薬 理部 門
of Whole-body
on the Plasma Thyroid-stimulating
田
Microwave
Exposure
Adrenocorticotropic Hormone
Ryoichi Inaba*1, Shinya Watanabe*1,
Hormone,
and Thyroid
Hormones
in Rats
Akira Okada*1 and Takashi
Moroji*2
*1 Department of Public Health , School of Medicine, Kanazawa University, Kanazawa *2 Department of Psychopharmacology , Psychiatric Research Institute of Tokyo, Tokyo To investigate the effects of whole-body microwave exposure on plasma adrenocorticotropic hormone (ACTH), thyroid-stimulating hormone (TSH), thyroxine (T4) and free triiodothyronine (T3) levels, rats weighing 267-306g (light group) and 352-387g (heavy group) were exposed to microwaves with a frequency of 2,450MHz at the power densities of 5 and 10mW/cm2 under an ambient temperature of
21℃
mW/cm2
to
23℃ in
the
for
an
light
hour. group,
Rectal and
temperatures
by 0.7℃
at
5mW/cm2
were
increased and
1.5℃
by at
1.0℃
at
5mW/cm2
10mW/cm2
in
and
the
heavy
2.1℃ group
at
10
after
microwave exposure. Plasma levels of ACTH increased significantly at 10 mW/cm2 in the light group and 5 and 10 mW/cm2 in the heavy group after microwave exposure. Plasma levels of TSH increased significantly at 10 mW/cm2 only in the light group. As for plasma levels of free T3, a significant decrease at 10 mW/cm2 was observed only in the heavy group. However, plasma levels of T4 did not change in either group after microwave exposure.
Key words
: Microwave,
Adrenocorticotropic
hormone
Thyroid-stimulating
hormone,
Thyroid hormone, Rat マ イ クロ波,副 腎皮 質 刺 激 ホ ル モ ン,甲 状 腺 刺 激 ホル モ ン,甲 状 腺 ホル モ ン,ラ ツト
る こ と も報 告 して きた3)。さ ら に,こ れ らの マ イ クロ波 の
緒
言
生 体 へ の影 響 は主 として そ の温 熱 作 用 に基 づ くとい うこ
マ イ クロ波 は,近 年,日 常 生 活 や職 場 環 境 に お いて そ
とが 推察 され た 。 そ こで,今 回 は,体 温調 節 に関係 す る
の幅 広 い応 用 か ら,騒 音 や振 動 な ど と共 に重 要 な物 理 的
とされ る血 漿 副 腎皮 質 刺 激 ホ ル モ ン4,5),甲状 腺 刺激 ホ ル
環 境 因 子 の ひ とつ にな っ て きて い る1)。したが って,マ イ
モ ン6.7),甲 状 腺 ホル モ ン6,7)への マ イ ク ロ波 全 身 暴 露 の影
クロ波 につ い て も騒 音 や振 動 な ど と同様 に,そ の生 体 へ
響 につ い て動 物 の 大 きさ を考慮 しなが ら検 討 した の で こ
の影 響 を明 らか に し,許 容 基 準 を確立 す る必 要 が あ る と
こに報 告 す る。
考 え られ る。 そ こで,著 者 らは,マ イ ク ロ波 の 生体 へ の
対象 および方法
影響 に関 す る研 究 に着 手 し2,3),マイ クロ波 の照射 強度 と ラ ッ トの生存 時 間 との 間 の 関係 を検 討 し,動 物 の大 きさ が生 存 時 間 に大 き く影 響 す る こと を報 告 した2)。また,マ イ クロ波 暴 露 に よ って 血 漿尿 酸,ア ラ ン トイ ンが上 昇 す
1.対
象
使 用 し た 動 物 は,Wistar系 306g(平
均 体 重292.3g,生
雄 性 ラ ッ トで あ る 。267後9週
齢,以
下,軽
量 群 と略
日 衛 誌(Jpn.J.Hyg.)第46巻
〔640〕 記)の
ラ ッ ト16匹 お よ び352-387g(平
生 後13週
齢,以
下,重
し た 。 動 物 は,室 か ら午 後8時
均 体 重370.5g,
量 群 と略 記)の
温21-23℃,湿
第2号1991年6月
度50-60%,午
前8時
Fig.1に
まで を明 期 とす る人 工 照明 の動物 室 で飼 育
し た 。 餌 と水 は,ラ
ッ トが 自 由 に 摂 取 で き る よ う に し た 。
本 研 究 で は,4-6匹
結
ラ ッ ト を15匹 使 用
の ラ ッ トを一群 として 実験 を行
った 。
に1時
法
軽 量 群 で は,直 (6匹)に
腸 温 は5mW/cm2の
よ り前 値 よ り10℃
一 方,重
の 暴 露(5匹)に
のエ ネル ギ ー量 を連 続 的 に変 え る こ との で き る発 振 装
(p