〔688〕
運動鍛練 ラ ッ トにお ける急性寒冷暴露時の熱産生亢進 樫
村
修
生
信州豊南女子短期大学保健体育
Improved
Thermogenesis
during
Acute
in Exercise-Trained
Osamu Department of Physical Education,
The on
present
study
carbohydrate
The
was
warm-acclimated
group
(CA)
at the
rate
due
to cold
but
did
was
consumption
group.
The
change
in the
significantly for
in the ET during
group.
greater
cold
in the
ET
the
groups
thermogenesis
words:
fall
treadmill.
of
training,
WA
WA
may
Carbohydrate
25℃,
with
ET
WA
glucose group. be
caused
of
level
by
but ET
after
results enhanced
metabolism,
the was
Cold
to
run
metabolism and
CA
groups,
administration,
not
decrease
groups, the
groups.
controlled
carbohydrate
did
training
three
cold-acclimated
in the WA
and
These
and
exercise
into
2-deoxyglucose
groups,
in the
by
divided
(ET)
degree
temperature
and
plasma
in the group
at
group
blocked
exposure
the
were
The
in environmental was
induced
rats
environment
exercise-trained
in the
tolerance
Wistar
The
cold
than
in the ET
Exercise
the
utilization
during
cold
male
driven
the drop
decreased
that CA
a small
glucose
decreased
of enhanced
to
to 5℃. on
exposure
and
exposed
with
When
effects
Five-week-old
exposure
It appeared
cold-induced
Key
by
decreased
content
the
was
for 9 weeks
group.
Kashimura
exposure. (WA)
to cold
per minute
liver glycogen CA
group
Rats
Shinshu Honan Women's Junior College, Nagano
to examine
cold
significantly
change
oxygen
capacity
acclimated
exposure
out
during
control
of 35 meters
not
carried
metabolism
Cold Exposure
in the
but
infusion
indicate
there of
that
carbohydrate
insulin
the
CA
was
no was
improved
metabolism.
tolerance
運 動 鍛 練,糖 質 代 謝,耐 寒 性
が な く,耐
緒言
寒 性 増 強 にshiveringば
存 しな いNSTの
寒 冷 暴 露 時 に お け る 熱 産 生 の 亢 進 は,寒
冷馴 化 ラ ッ ト
か りで な く,NEに
依
亢 進 も 関 与 す る こ と が 報 告 さ れ て い る5)。
そ こで,本 研 究 は,運 動 鍛 練 ラ ッ トに おけ る寒冷 暴 露
と 同 様 に 運 動 鍛 練 ラ ッ トで も み ら れ る1,2)。 さ ら に,運
時 の 熱 産生 の亢 進 は,寒 冷 馴 化 ラ ッ トの よ うなnorepi-
動 鍛 練 に よ る寒 冷 暴 露 時 の 熱 産 生 亢 進 は,norepinephrine
nephrineに 依 存 す るNSTの 増 大 とは異 な り,糖 代 謝 の 亢
(NE)依 存 性 の 非 ふ るえ 熱 産 生(nonshivering
進 に よるの で はな い か との仮 説 を確 か め るた め に行 った 。
NST)と
thermogenesis:
密 接 な 関 係 に あ る脂 質 代 謝 の 促 進 や 運 動 鍛 練 に
よ り褐 色 脂 肪 組 織(brown
adipose
が 認 め ら れ な い こ と か ら,NEに
tissue:
BAT)は
変化
依 存 しな い 糖 質 代 謝 の
促 進 に よ る 関 与 が 推 測 で き る と し て い る が3),詳
細な検
ラ ッ トを 対 象 と して 寒 冷 暴露 に よ る糖酸 化 量,肝 細 胞 及 び筋 肉 グ リコー ゲ ン含 有 量,糖 代 謝 抑制 に よ る代謝,血 中物 質 及 び イ ン ス リン投 与時 の 糖 降 下反 応 につ い て検 討 した。
討 は さ れ て い な い 。 ま た,MartineauとJacobs4)は, shiveringに
材料と方法
よ る 熱 産 生 時 に 筋 の グ リ コ ー ゲ ン利 用 が 促
進 され る こ と を報 告 して い る 。 寒 冷 暴 露 時 に 運 動 鍛 練 ラ ッ トのshiveringを
抑 制 し た 実 験 で は,熱
産 生量には変化
実 験 動 物 は,5週
齢 のWistar系
件 に 分 け そ れ ぞ れ50匹
ず つ9週
雄 ラ ッ ト150匹 を3条 間 飼 育 した。
樫 村:運 動 鍛 練 ラ ッ トに おけ る急 性寒 冷 暴 露 時 の 熱産 生 亢 進 (1)
温 暖 馴 化 対 照 群(Warm-acclimated:WA):気
温25
℃ 下 で 飼 育 した 。 (2)
寒 冷 馴 化 群(Cold-acclimated:CA):気
温5℃
で慢
(3)
温25℃
で飼
動 物 用 ト レ ッ ド ミル(KN-73,夏
2.糖
目)を 用 い,
ラ ン ニ ン グ運 動 を 走 行 速 度30m/min,1時
(1)
与 に よ る寒 冷 暴露 測定
(2)
各 気 温 で の 測 定 間 隔 は,2日
れ ぞ れ 気 温25,5お ,開
よび
5℃ 暴 露 下 で 生 理 食 塩 水(注 入 量0.1ml/100g体
(3)
間 置 き,気
に-5℃
温25℃,5℃,
な お,す
VO2の
定時間はそれぞれの
間 で あ っ た 。 ま た,そ
お け る 非 た ん ぱ く呼 吸 商(RQ)を
の ガス代 謝 に
重,注
入 量0.3-0.5ml)を
投 与 し,直
べ て の 投 与 は,尾
静 脈 か ら行 った 。
測 定 は,開 放 式 呼 気 ガ ス採 気 装 置 を 用 い,そ
後 直 ち に,pentobarbital麻
費 量(O2:ml/kg/min)及
ち
に 暴 露 した 。
れ そ れ の 条 件 設 定 か ら50分 経 過 後10分
求 め る た め に,CO2発
生 量(CO2:ml/kg/min),O2消
重)
生 理 食 塩 水 に 溶 解 し た2-Deoxyglucose(2-DG,
10mg/100g体
放式呼
ク ダ)に よ り測 定 した 。
間 暴 露 し,測
重)
を投 与 した 。
に お け る 代 謝 量(VO2:ml/kg/min)を
気 ガ ス 採 気 装 置(MAH-606,フ
測
を 投 与 した 。
1.温 暖 お よび 寒 冷 暴露 時 の 代 謝 量測 定 の ラ ッ トを 用 い,そ
度 及 びVO2を
25℃ 暴 露 下 で 生 理 食 塩 水(注 入 量0.1ml/100g体
実験の全容 をま
とめ た もので あ る。
の 順 序 で 各60分
利 用 阻害 剤2-Deoxyglucose投
定 した。
は 実験24時 間 前 に 気 温25
℃の 部 屋 へ 移 動 させ た 。Table 1は,本
暴 露 時 間 の 最 後10分
生量
表 に よ り糖 質 酸 化 量
グル コー ス,血 漿 遊 離 脂 肪 酸(FFA)濃
実 験 を実 施 した 。 な お,CA群
-5℃
出 で のCO2発
らLusk7)の
各 群21匹 ず つ下 記 の3条 件 下(各 条 件7匹 ず つ)で 血漿
飼 育終 了後,各 群 と も24時 間 の絶 食 後 に以 下 の5つ の
各 群5匹
出 に 要 す るO2量
窒 素1mg排
時 の 代 謝 量 及び 血 中 グ ル コー ス,FFAの
間/日,5
回/週 を 実 施 した 。
-5℃
窒 素1mg排
0.005923:尿
を 算 出 した 。
運 動 鍛 練 群(Exercise-trained:ET):気
育 し,小
0.004754:尿
さ ら に,VO2とRQか
性 的 に 飼 育 した 。
〔689〕
間 実 施 した 。 終 了
酔 下(40mg/kg,ip)で
動 脈 か ら採 血 した 。 血 液 は,ヘ
腹大
パ リンを添 加 後遠 心 分 離
び た ん ぱ く代 謝 量 を 測 定 した 。 た ん ぱ く代 謝 量 測 定 の た
し,得
ら れ た 血 漿 を 検 体 と して 用 い た 。 血 中 物 質 の 分 析
め,代
は,グ
ル コ ー ス は 酵 素 法(グ
謝 ケー ジ を 用 い て1日
尿 を 採 集 し,Kjeldahl法6)
に よ り窒 素 量(N2:mg/min)を
求 め た 。 以 下 にRQの
算
ル コ ー ス テ ス トワ コ ー,和
光 純 薬),FFAはDuncombe変
法(NEFAテ
ス ト ワ コ ー,
和 光 純 薬)で 行 った 。
出 方 法 を示 す 。 RQ=(CO2-N2×0.004754)/(VO2-N2×0.005923)
Table 1
Ta: ofter each
Experimental
Ambient being
protocols
temperature, fasted
experiment.
BG:
for 24hrs.
blood
glucose,
Cold-acclimated
FFA: rats
free-fatty
acids.
(CA)were
transferred
The
animals to
25℃
were
used
conditions
for the experiments for
24hrs
before
〔690〕
3.寒
日衛 誌(Jpn.J.Hyg.)第47巻
第3号1992年8月
冷暴 露 時 の 組織 グ リコー ゲ ン含 有 量,血 漿 ピ ル ビ
脂 肪(IBAT)お
ン酸 お よび 血 漿 ア セ ト酢 酸 濃 度 の測 定 各 群 ラ ッ ト14匹 ず つ を 用 い,そ (n=7)お
よ び-5℃1時
麻 酔(4mg/100g体
なお,統 計 処 理 に よる差 の 検 定 は,分 散 分 析 法 を用 い
れ ぞ れ 気 温25℃24時
5%を
間
結
で 腹 大 動 脈 か ら採 血 し,さ
の 方 法8)に
CAとET群
よ り分 析 し た 。
ル ビン 酸 は 酵 素 法(デ タ ミ ナ ーPA,協
ク ス),ア
の各群 の体重 には有 意 差 が な く,9週
理 食 塩 水 で 充 分 に 洗 浄 した 。 肝 お よ び 筋
の グ リ コ ー ゲン は,Goodら
セ ト酢 酸 は ケ トン 体 分 別 法(ケ
和 メデ ィ ッ
示 した 。 心 室 重 量 で は,WA群
お い て,イン
ス リン(0.48U/100g体
理 食 塩 水(n=5)を pentobalbital麻
群 を2条
尾 静 脈 か ら 投 与 し,120分
に
WAお
経 過 後
IBAT:
interscapular
Body
weight,
brown WA:
Exercise-trained
VO2: oxygen Data
are
WA
rats.
and
CA
adipose
Data
interscapular
tissue,
WAT:
rats,
consumption,
よ び-5℃ 暴 露 時 のVO2お
よ
*p