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白血 球 殺 菌 能 に 及 ぼ す ニ ュ ー キ ノ ロ ン剤 の 影 響 東京慈恵会医科大学泌尿器科学教室(主 任:町 田豊平教授) 三
Key
words:
谷
比 呂志
清
(平成3年9月5日
受 付)
(平成3年9月24日
受 理)
polymorphonuclear new
浩
leukocytes,
quinolones,
superoxide
anion,
urine
要 尿 路 感 染 症 の 際 に,尿
田
中 に遊 出 す る 白 血 球,と
旨 くに 好 中 球 に 対 して,ニ
ュ ー キ ノ ロ ン剤 が 及 ぼ す 影 響
に つ い て 検 討 し た. 好 中 球 は健 常 人 の 末 梢 血 よ り分 離 し,リ 能 は,ス
ン 酸 緩 衝 液 中 お よ び 尿 中 で 殺 菌 能 を 測 定 した.好
ーパ ー オ キ サ イ ド産 生 能 を 指 標 と し,chemiluminescence法
剤 はnorfloxacin
(NFLX),
使 用 し,各 薬 剤1μg/ml, そ の結 果,好
enoxacin 10μg/ml,
(ENX),
100μg/ml存
中 球 殺 菌 能 は リン酸 緩 衝 液 中,尿
か っ た が,10μg/mlで
ofloxacin
に よ り測 定 し た.ニ
(OFLX),
ciproHoxacin
中球 の殺菌 ューキ ノロソ
(CPFX)の4剤
を
在 下 で 好 中 球 の ス ー パ ー オ キ サ イ ド産 生 能 を 測 定 した. 中 共 に ニ ュ ー キ ノ ロ ン 剤1μg/mlで
は 増 強 され,100μg/mlで
は影 響 は認 め られ な
は 抑 制 され た.以 上 よ り,尿 中 の 好 中 球 殺 菌 能 は ニ ュ ー
キ ノ ロ ン 剤 通 常 量 投 与 で も抑 制 され る と考 え られ た.
序
文
剤 に よ っ て,ど
生 体 で は,外 部 よ り侵 入 す る細 菌 に 対 し,ま ず
の よ うな 影 響 を受 け るか を検 討 し
た.
非 特 異 的 感 染 防 御 機 構 す な わ ち多 形 核 好 中球 (polymorphonuclear
leukocytes;以
材 料 と方 法 1.好
下PMNと
略 す)と 単 球 か ら な る細 胞 性 因 子 や 補 体 な どの体 液 性 因 子 が 対 抗 し,菌 に 対 し抵 抗 す る1).こ の 時 生
中 球 殺 菌 能 の測 定
1.好
中 球 の 収 集;健
ソ 加 末 梢 血 を,Mono-Poly
体 に 抗 菌 剤 を投 与 す る と,抗 菌 剤 と非 特 異 的 感 染
(Fiow社
防 御 機 構 が 協 力 し て殺 菌 す る と され て い る2)∼4).
心 し た.遠
そ して この 抗 菌 剤 と非 特 異 的 感 染 防 御 機 構 の 協 力
に て 取 り 出 し,0.1M,
が,感 染 症 に対 す る抗 菌 化 学 療 法 の有 効 率 を 左 右
(phosphate
す る一 つ の 因 子 に な る と推 測 され る.従
に て 洗 浄 し,PBS中
って,こ
製)に
の 抗 菌 剤 と非 特 異 的感 染 防 御 機 構 の 協 力 作 用 を 明
PMNは,trypan
らか に す る こ とは,感 染 症 に お け る薬 剤 選 択 と治
存 率 が95%以
療 効 果 の 予 測 を た て る意 味 で も重 要 で あ る.本 研
た.
究 で は,そ の 感 染 防 御 機 構 を 担 う と さ れ るPMN の 殺 菌 能 が,近 年 多 用 され て い る ニ ュ ー キ ノ ロ ン 別 刷 請求 先:(〒105)港
重 層 し,室
心 後,PMN層
buffer
三 谷比 呂志
た.な
Medium
温 に て300g,30分
間遠
を パ ス ツ ー ル ・ピ ペ ッ ト pH7.0の
にPMNを blueに
リン酸 緩 衝 液 下PBSと
略 す)
再 浮 遊 さ せ た.
よ る超 生 体 染 色 で そ の生
上 で あ る こ と を 確 認 後,実
の 調 整:尿
お,尿
Resolving
solution;以
中 のPMNの
験 に供 し
殺 菌 能 は300
低 張 尿 中 で 最 高 と な る5)の で,PMN な った 健 常 人 の 濃 縮 尿 お よ び 希 釈 尿
を 混 合 し,300mOsm/kgの
東京 慈 恵 会 医科 大 学 泌 尿器 科
平 成4年1月20日
2.尿 mOsm/kgの のdonorと
区西 新 橋3-25-8
常 人 よ り採 取 し た ヘ パ リ
尿 を作 成 し実 験 に 用 い
の 浸 透 圧 測 定 に はOsmometer(オ
ス
三谷比 呂志 他
60
ノ テ ッ ク プ レ ッ シ ャ ー ・オ ー ト ア ン ド ス タ ッ ト
用 い た 。PMNの
OM-6010)を
と 同 様 に,薬
使 用 し た.
3. 好 中 球 殺 菌 能 の 測 定:血 能 はPBS中
で,ま
中 のPMNの
た 尿 路 中 のPMNの
殺 菌 殺 菌能 は
cence法
な お,各
で 表 現 し た.
実 験 は5回
に よ り測 定 し た.す
な わ ち,ま
に1.0×106個
結
myristate
のPMNと33
myristate
懸 濁 し,ド
acetate(PMA)あ
刺 激 し,Multibiolumat
能 は,こ
のCL値
LB
製)で
acetate(PMA)刺
で,phorbol 激,オ
プ ソ ニ ン化 ザ
最 高CL値
の 最 高 値 をPMNの
後 に
を と っ た.こ
生 能 とみ な し た. PMNの
ス ー パ ー オ キ サ イ ド産 生 能 は,phorbol
myristate
下CL値
と略
種 ニ ュ ー キ ノ ロ ン 剤 毎 に 次 の 成 績 を 得 た(Table
イ モ ザ ン の オ プ ソ ニ ン 化 は,20mgを2回
お,ザ
洗 浄 し,
り 得 た 血 清(補
体 価:35.5
acetate(PMA)に
よ る 刺 激 の 場 合,各
1,Fig.1). NFLX1μg/mlで
は薬 剤 の 存 在 し な い場 合
(contro1;100)に を 示 し た が,有
間 培 養 す る こ とに よ って
μg/mlで
比 べ て118.9±19.8と
や や増 強
意、 差 は 認 め な か っ た.NFLX10
は369.0±143.5でcontrolと
比 べ3.7倍
と有 意 な ス ー パ ー オ キ サ イ ド産 生 能 の 増 強 を 認 め
行 っ た. 使 用 薬 剤:ニ
norfloxacin
ュ ー キ ノ ロ ン 剤 を 対 象 と し,
(NFLX),
ofloxacin
(OFLX),
enoxacin ciprofloxacin
(ENX),
(p