日耳 鼻
93-1965
床 義 歯異 物 症41例 の検 討 と想定 ろ う義歯模 型作製 の意 義 岩 手医科 大学 耳鼻 咽喉 科学教 室(主 任:立 木 阿
STATISTICAL AND
TAKASHI
FOOD
部
隆,立
STUDY PASSAGES
WITH
TSUIKI,
School
in our department
(1) Males were more frequently (2) Of 41 dentures,
和
森
FOREIGN
OF THE
DUPLICATED
of Medicine,
during
孝教 授)
夫,笹
M.D., KAZUO MURAL
study of 41 cases with denture
which were treated
井
DENTURE
SIGNIFICANCE
of Otolaryngology,
A stastistical
孝,村
OF 41 CASES AND
ABE, M.D., TAKASHI
Department
木
Iwate
史
朗
BODIES
IN THE
DENTURE
AIR
MODEL
M.D. and SHIRO SASAMORI, Medical
University,
M.D.
Morioka
foreign bodies in the air and upper food passages
the past 21 years was done.
affected.
The ratio of male to female was about 2 to 1.
2, 2 and 37 were lodged in the air passages,
hypopharynx
and esophagus
respectively. (3) There
were 5 complete
mandibular
(4) The causes of the denture 29 cases, that
of the patient
dentures
himself
to miss-making
(6) Of 12 patients (7) The denture recent years.
partial
second isthmus
in their physical function,
5 had suffered from cerebrovascular
dementia. with physical
tried to remove by esophagoscopy,
dentures
itself in
the breakage such as plate fracture and clasp In this latter group, poor holding of the denture
foreign body in aged patients
(8) Of 39 dentures detatchable
of denture
or miss-planning.
with problems
disease and 3 from geriatric
to the problem
in 2 cases and both in 10 cases.
(5) Of 39 problematic dentures, 16 showed deformity, but the other 23 showed no breakage. was ascribed
in 41 cases.
foreign bodies were originated
with one artificial
of the esophagus.
Though
trial, we have no case needed external
hypofunction
tends to increase
in
18 were done with difficulty and they were
tooth and 2-arm-clasps
we have a denture
removed
lodged at the first and/or successfully
at the third
esophagotomy.
(9) Duplicated denture models were made in 20 cases prior to the procedure, and we certify that these models play an important role for the safer removal of denture foreign bodies.
Key
words:床
義歯 異 物.統
I.は 義 歯 異 物 は,一
計 学 的 検 討,想
定 ろ う義 歯 模 型
て 統 計 的に 検 討 した 報 告 は 少 な いl) 4).
じ め に
般 に 摘 出 操 作 が 困 難 で 開 胸 手 術 を余
儀 な く され る こ と もあ る と い う意 味 で,気
A93-1965-80781
道 食道 異物
過 去21年 間 に岩 手 医 大 耳 鼻 咽 喉 科 で 経 験 し た 床 義 歯 異 物41例 を 対 象 に,義
歯 異 物 発 症 の 原 因,並
びに異物
の 中 で も特 別 な 位 置 を 占 め て い る.義 歯 異 物 に関 す る
と なっ た床 義 歯 の 形 状 と摘 出 操 作 の 難 易 との 関 係 を 中
これ ま で の 報告 は 症 例 報告 が 大 部 分 で,多
心 に検 討 す る と共に,1979年5月
数 例 につ い
以来 異物 義歯 に関 す
93-1966
阿 部・ 他=義
る正 確 な 情 報 を得 る 目的 で,術
歯 異 物 統 計 と ろ う義歯 模 型
前 に 作 製 し て き た想 定
ろ う義 歯 模 型5)6)7)と実 際 の 異 物 義 歯 とを 比 較 し,そ
の
意 義 に つ い て検 討 した の で 報告 す る.
で,食 道 で は入 口部 と第1狭 せて23例・ 第1第2狭 食 道)が
968年1月
か ら1988年12月
手医
大 耳 鼻 咽 喉 科 で 経 験 し た,床
義歯 の 気 道(喉 頭・気 管・
気 管 支)な
咽 頭・ 食 道)異
らび に 消 化 管(下
部 食 道)が
転 帰 は表1の
まで の21年 1 間に,岩
物41例 を
窄 部(上
は2回
下 し排 出 され た.残 さ れ た.摘
合 わ せ て3例
ご と く41例 中1例
然 落 下 排 出,1例
部 食 道)が 合 わ
窄 部 の 中 間 と第2狭
合 わ せ て11例・ 第2第3狭
狭 窄 部(下 II.対 象 な らびに 方 法
1990
窄 部(中
部
窄 部 の 中 間 と第3 で あ っ た(図2).
は 喀 出 さ れ,1例
は自
の 摘 出操 作 不 成 功 の 後 自然 落
りの38例 は す べ て 直 達 鏡 下 に摘 出
出操 作 が 困 難 で あ っ た もの は38例 中17例,
対 象 と し て,以 下 の 項 目 に対 す る統 計 学 的 検 討 を行 っ
比 較 的 容 易 で あ っ た も の は21例 で あ っ た.摘
た.(1)年 齢・ 性 別・ 嵌 在 部 位・ 転 帰 な ど床 義 歯 異 物 症
困 難 とは,床 義 歯 の 鈎 あ る い は鋭 利 な 破 折 床 な ど が 食
出操作 が
の 一 般 臨 床 統 計,(2)床 義 歯 異 物 症 の 発 症 原 因,(3)異 物
道 壁 に強 く くい 込 み,あ
床 義 歯 の 形 状 と摘 出 操 作 の 難 易,(4)異 物 床 義 歯 と想 定
出 に 際 し て 異 物 義 歯 の回 転 や 糸 つ き ビニ ル 片 に よ る鋭
ろ う義 歯 模 型 の 異同.
利 部 の 保 護 な どの 操 作・ 工 夫 を要 し た場 合 を 言 う.摘
る い は 一 部 刺 入し て お り,摘
出 が 容 易 と は,単 純 な 牽 引 で 摘 出 で き た 場 合 の 他 に, III.結 1.床
果
食 道 壁 に く い込 ん だ 鋭 利 部 位 の 開 放 が 硬 性 鏡 使 用 に よ
義歯 異物症 の一般 臨床 統計
1968年1月
か ら1988年12月
験 した 気 道(喉 咽 頭・食 道)異
り比 較 的 容 易 に で き た 場合 も含 め た.
まで の21年間 に 当 科 で経
頭・ 気 管・ 気 管 支)並
び に 消 化 管(下
物 総 数 は652例 で あ り,従
義歯 異 物41例 は6.3%と
な る.41例
っ て対 象 の 床
中 気 道 異 物 は2例
(気道 異 物 総 数160例 中1.3%)・
消 化 管 異 物 は39例(消
化 管 異 物 総 数492例 中7.9%)で
あ っ た.性
例・ 女性14例 で,年
歳 以 上 が35例・85.4%,60歳 め た(図1).初
別 は 男 性27
齢 は20歳 未 満 が1例・2.4%で,40 以 上 が19例・46.3%を
占
診 時 に お け る異 物 の 嵌 在 部 位 は,気 道
異 物 で は 喉 頭・ 気 管 支 各1例 は 下咽 頭2例・ 食 道37例(食
で あ っ た.消
化管 異物 で
道 異 物 総 数383例 中9.7%)
*義歯に主因 両者 に原因 * 患者に主因 * *:摘 出 困 難 例(n=18)
図2
異物 床義 歯の種 類 と嵌在部位・ 摘出操作 の 難易 表 1
図1
床 義歯 異物の発 症年 齢 と原因
床義 歯 異 物 の 転 帰
日耳 鼻
阿 部・ 他=義
歯 異 物 統 計 と ろ う義 歯 模 型
表2 床義 歯異物 発症 の原因
93-1967
理 機 能 低 下 に原 因 が あ る と考 え ら れ た12例 の 異 物 義 歯 は,顎
堤 上 の 歯 数 に 換 算(後 述)し
きい もの が 多 い こ とが 特 徴 で,13歯 (大)が5例
大以 上の大
大 が3例・
総義 歯
で あっ た.介 在 部 位 は 大 部 分 が 上 部 食 道 で,
喀 出 の1例 易 は,困
て8歯
を除 い て す べ て 摘 出 で きた.摘
難 例5例・ 容 易 例6例
困 難 例5例
の う ち2例
は2回
出操作 の難
と ほ ぼ 同 数 で あ っ た が, 目 の,1例
は3回
目の摘
出 操 作 で や っ と摘 出 で きた 極 め て 困 難 な 例 で あ っ た. で,義 歯 の 維 持 力 低 下 に 主 因 が あ る と考 え られ た もの
因 み に,2回
以上 の摘 出操作 を要 した極 めて困難 な例
29例・ そ れ ら両 者 が 相俟っ て発 症 した と考 え られ た も
は41例 中4例
で あ った.異
の10例 で あ っ た.患
者 の 生理機 能低 下 に原因 が ある と
考 え られ た12例 の 詳 細 が 表3,義
歯 の維 持力 低下 に原
因が あ る と考 え られ た39例 の 詳 細 が 表4で
あ る.表3
をみ る と患 者 自 身 に あっ た 問 題 点 の 内 容 は,脳 血 管 障 害(脳 出 血・ 脳 梗 塞 〉 が5例・ 2例・ 精 神 病1例・
老 人 性 痴 呆3例・
精 神 薄 弱1例
で あ った.患
泥酔 者 の生
した39例 の 原 因 を,表4の
ご と く義 歯 に 破 損 が あっ た
場 合 とな かっ た 場 合 に分 け て検 討 した.義 歯 に 破 損 が 認 め られ た例 は16例 で,そ の 変 形 並 び に 破 折 が6例 た 例 は23例 で,そ 作 ミ ス)10例・
の 内訳 は 床 の 破 折10例,鈎
で あ っ た.義
歯 に破 損 が な か
の 内訳 は 維 持 不 良 の1本
義 歯(製っ
設 計 ミス に よ る維 持 不 良 義 歯7例・
表3 患者 の生理 機能 低下 に原因 の あった例 の詳細
表4
物義歯 の維 持力低 下 を きた
異物 床義歯 の維 持 力低下 の主原 因
()内ば 延べ数
鈎
93-1968
阿 部・他=義
歯 異 物 統 計 とろ う義 歯 模 型
図4 図3
異物 床義 歯の大 きさ・鈎 の数 と嵌在部位・ 摘 出操作 の難 易
床義歯 異物 の年度 別発 症数 と原因
歯 の齲 蝕 や 欠損 に よ る維 持 力 低 下3例・
1990
表5 鈎 の種類 と摘 出の難 易 粘 膜 吸着不全
に よ る維 持 低 下3例
で あっ た.部
分床 義 歯 の 設 計 ミス
の 内 容 は2腕 鈎1個
の 遊 離 端 義 歯 や両 側 犬 歯 の み に維
持 を 求 め た 前 歯 部 義 歯 な どで あっ た.床 義 歯 異 物 の 発 症 年 齢 お よ び年 度 別 発 症 数 を上 記 原 因 別 に み る と,発 症 年 齢 で は 図1の
ご と く,床 義 歯 異 物 の 増 加 す る40歳
以 降 か ら患 者 郷 に も原 因 が あ る と考 え られ る例 が 増 加
現 し た.す
す る 傾 向 が 認 め られ た.年 度別 発 症 数 は 図3の
算 し リ ン ガル バ ー 使 用 義歯 はバ ー 相 当 部 の 歯 数 も加 え
ご と く,
な わ ち2腕 鈎2個
1977年 よ り患 者側 に も原 因 が あ る と考 え ら れ る例 が 認
て 義 歯 の 大 き さ と した.ま
め られ,1983年
鈎 も と も に鈎 数1個
3.異
以 降 で その 割 合 が 高 い.
物 床 義 歯 の 形 状 と摘 出 操 作 の 難 易
義 歯 の種 類 で は,41例
22例 対19例,総
義 歯 対 部 分 床 義 歯 は5例
た.総
義 歯 の5例
中 で は22例 が 上 顎,14例 上 顎 義 歯 は 第1狭 多 く第2狭
中上顎 対下顎 は
は い ず れ も下 顎 で,部
対36例 で あっ 分 床 義 歯36例
が 下 顎 で あっ た.嵌 在 部 位 は,
窄 部 お よ び 第1第2狭
た 鈎 の 数 で は単 腕 鈎 も2腕
と した.義
大 以 内 が41例 中16例・39.0%と
2に 異 物 床 義 歯 の 種 類 と嵌 在 部 位・ 図 摘 出操作 の難 易 を 示 した.床
の1本 義 歯 は 歯 数3と 換
窄部 の中 間に
窄 部 以 下 に 少 な い の に対 し,下 顎 義 歯 に は
そ の よ う な 好 発 部 位 が な く食道 入口 部 や 第2狭窄部
以
歯 の 大 き さで は,3歯 最 も多 かつ た が,8歯
大 以 上 も17例・37%と
多 く総 義 歯 大 も6例・13%で
っ た.鈎
が41例 中22例・53.7%と
の 数 で は2個
く,次 い で 無 鈎9例・1個7例 られ た.無 鈎9例
以 上 も3例 認 め
は 総 義歯 の 他 小 児 用 義 歯・ 鈎 の 破 折
義 歯 な ど で あ っ た.義 は,一
で3個
あ
最 も多
歯 の 大 き さ と嵌 在 部 位 の 関 連 で
般 に義 歯 が 大 き い ほ ど上 部 消 化 管 に嵌 在 す る割
合 が 高 い 傾 向 が うか が わ れ る が,鈎
の 数 と嵌 在 部 位 の
間 に は 一 定 の 傾 向 を見 出 せ な い.鈎 の 数 が2個
の22例
下に も比 較 的 多 く認 め られ た.下 顎 の 総 義 歯 異 物5例
だ け を み る と,上 部 食 道 お よ び 中 部 食 道 以 下 に 嵌 在 し
中4例
た 割 合 は ほ ぼ 同 数 で あ っ た.義 歯 の 大 き さ・ 鈎 の 数 と
は 下 咽 頭・ 食 道 入 口 部 で あっ た が,1例
狭 窄 部 を 通 過 し第2狭
は 第1
窄 部 と の 中 間 に 認 め ら れ た.義
歯 の 種 類 と摘 出 操 作 の 難 易 を み る と,摘 出 困 難 例 は上
摘 出操 作 の 難 易 との 関 連 で は,義 以 上 の 大 きい 例,3歯
歯 の 大 き さ が8歯 大
大 以 下 の 小 さ い例 で も鈎 の 数 が
顎 対 下 顎 で は,上 顎22例 中11例・ 下 顎19例 中7例
と上
2個 の 例(大
顎 に 多 く,総 義 歯 対 部 分 床 義 歯 で は,総 義 歯5例
中2
が 多 かっ た.表5に
例・ 部 分 義 歯36例 中16例 とほ ぼ 同 率 で あっ た.嵌
在部
線 鈎 使 用 義 歯26例 中 摘 出 困 難 例 は10例・38.5%で
位 で は,第1狭 く,31例
窄 部 か ら第2狭
中16例・52%が
窄 部 に摘 出 困 難 例 が 多
摘 出困 難 で あっ た.義 歯 の 大
部 分 が1本
義 歯)に
た の に 対 し,鋳 造 鈎 使 用 義歯6例 例・83.3%で
摘 出操 作 の 困 難 な例
鈎 の 種 類 と摘 出 の難 易 を 示 した.
あっ た.表6に
あっ
中 摘 出 困 難 例 は5
摘 出 困 難例18例 の 詳細 を
き さ・ 鈎 の 数 と嵌 在 部 位 な ら び に摘 出 操 作 の 難 易 との
示 し た.義 歯 の 問 題 点 を み る と,脳 出血 患 者 の1例
を
関 連 を 図4に
除 く17例 で義 歯 の 維 持 力 低 下 に 主 因 が あっ た.17例
中
示 した.な
お,義
歯 の大 きさは実際 に装
着 さ れ た 時 の 義歯 の 範 囲 を顎 堤 上 の 歯 数 に換 算 し て 表
義 歯 に破 損 が 認 め られ た の6例
で,破 損 の 認 め られ な
日耳 鼻
阿 部・ 他=義
表6
歯 異 物 統 計 と ろ う義 歯 模 型
摘出困
難例18例
の 詳 細
前 に作し 表7
93-1969
た 想 定 ろ う義 歯 の 実 際 例 を 示 した.
想 定 ろ う義歯 模 型 と 異 物 床 義歯の比 較 (n=20)
IV.考
按
義 歯 異 物 に 関 す る報 告 を 読 ん で 気 付 い た こ とが3つ あ る.第1は ン(冠)・
義 歯 の 定 義 が 曖 昧 な こ とで あ る.ク
ラウ
ブ リ ッジ(橋 義 歯)・ 床 義 歯 を一 緒に して 義
歯 と称 し た り,中 に は 歯 科 関 連 異 物 を 義 歯 異 物 と総 称 して い る報 告 も あ る4).ク ラ ウ ン・ブ リ ッ ジ と床 義 歯 が 異 物 となつ た 場 合 の決 定 的 な 違 い は,前 者 がX線 非 透 かっ た11例 中9例
は 維 持 不 良 の1本
過 性 で診 断・ 治 療 が比 較 的 容 易 で あ る の に対 し,後 者
義 歯 で あっ た.年
の 場 合 床 がX線
齢・ 来 科 ま で の 日 数 に は 特 徴 を 見 出 し得 な かっ た. 4.想
在 状 況 の 把 握 が 難 し く,治 療 に難 渋 す る こ とが 多 い 点
定 ろ う義 歯 模 型 と異 物 床 義 歯 との 異 同
1979年 以 降,著 知 る目 的 で,術
透 過 性 で あ る故 に そ の形 状 な ら び に 嵌
者 ら は 異 物 と なっ た 床 義 歯 の 詳 細 を
前 に 想 定 ろ う義歯 模 型 の 作 製 を 行つ て
に あ る.従つ
て,そ れ ら歯 冠 補 綴 物 と床 義 歯 の 異 物 を
義 歯 異 物 と して 一 緒 に 扱 う こ とは 望 ま し くな い.気
付
きた5)6)7).20例 の ろ う義 歯 模 型 と実 際 異 物 と なっ た 床
い た こ との 第2点
義歯 との 比 較 結 果 を表7に
損 義 歯 で あ る こ とか ら,義 歯 異 物 発 症 の 原 因 を〓 破 損
示 し た.床 の 形,鈎 の 位 置・
形 が 同 じで あ つ た も の が20例 中15例,少 が5例 で,大 違つ た も の5例 例 で,こ
き く違っ た もの は1例 の 内 訳 は,床
し違っ た もの
もな かっ た.少
の 形 が3例・
し
鈎 の 形 が2
れ ら は い ず れ も実 際 異 物 となっ た 義 歯 に破 損
が生 じた 例,あ
るい はその 基本 的設計 に問題 が ある と
考 え ら れ た 例 で あ っ た.図5に
摘 出 し た 異 物 義 歯 と術
は,異 物 と な っ た 義 歯 の 大部 分 が 破
義 歯 の 継 続 使 用〓 と い う点 に 帰 して い る 報 告 が 多 く, 他 の 要 因例え ば義 歯 が 装 着 され て い た顎 堤・ 残 存 歯 の 状 態 や 基 礎 疾 患 な ど に対 す る 検 討 が ほ とん ど な さ れ て い な い こ とで あ る.第3点
は,異 物 と なっ た 義 歯 の 詳
細 を列 挙 し て る もの の,ど
の 部 位 に 嵌 在 し た どの よ う
な 形 状 の 義歯 が 摘 出困 難 で あつ た の か と い う最 も重 要
阿 部 ・他=義 歯異物 統計 とろ う義歯 模型
93-1970
1990
傾 向 を示 して い た2)3).こ の 結 果 は 高 齢 者 の 人 口比 率 が 近 年 著 し く増 加 し て い る こ とに 関 係 して い る と思 わ れ る.嵌 在 部 位 で は床 義 歯 の 気 道 異 物 に 注 意 を要 す る. 一 般 に は小 さな 床 義 歯 と考 え られ が ち だ が ,我 々 の2 例 は,声
門 上 部 の 喉 頭 に 嵌 在 した 中 等 度 大(6歯
の 床 義 歯(鈎2カ
所)と
歯(鈎2カ
あ っ た.
所)で
転 帰 は,喀
大)
左 主 気 管 支 に 嵌 在 した1本 義
出1例
・自然 落 下1例
を 除 く39例 に直 達
鏡 下 摘 出 を試 み,胃
に落 下 した1例
を 除 く38例 す べ て
を摘 出 した.我 た症 例 は1例
々 の41例 中 に は 外 切 開 を余 儀 な くされ もな か っ た.こ
の 中 に は3度
目の摘出操
作 で や っ と成 功 し た例 も含 ま れ て お り,想 定 ろ う義 歯 模 型5)6)7).造影X線
写 真 や 立 体X線
写 真3)な ど に よ る十
分 な 術 前 検 討 と,筋 弛 緩 ・全 身麻 酔 下 の,熟
達者 によ
る慎 重 か つ 工 夫 を凝 ら した 摘 出操 作 の 賜 物 で あ ろ う. (2)義
歯 異 物 症 の発 症 原 因 に つ い て
異 物 とな っ た 床 義 歯 に つ い て詳 細 な 問 診 を と る と, その 大 部 分 が 維 持 不 良 で 脱 落 し易 か っ た と述 べ る.床 義 歯 異 物 発 症 の 原 因 を 考 え る と,間 接 的 に は そ の よ う な 不 良 義 歯 を そ の ま ま使 用 し て い た患 者 側 に 責 任 が あ る と い う こ と に な る2 が,我 図555歳
男 性 の食 道 床 義 歯 異 物 症 例 下 段 が 摘 出 した 異 物 義 歯(下 上 段 が 想 定 ろ う義 歯 模 型.
々 と して は床 義 歯 誤 嚥 の
直 接 的 原 因 につ い て検 討 す る こ とが 大 切 で あ ろ う.異
顎 ・14歯 大).
物 と な っ た 義 歯 に は鈎 や 床 の 破 損 例 が 多 く,そ の た め に 維 持 不 良 を き た した と一 般 に 考 え ら れ て い る2)が,
な 点 に 対 す る 検 討 が ほ とん ど な され て い な い こ とで あ
我 々 の 検 討 で は41例 中破 損 の 認 め られ た の16例 ・39.0
る.そ
%に 過 ぎ な か っ た.つ
こ で著 者 らは,こ
れ ら3点
を 考 慮 し,義 歯 異 物
ま り義 歯 に 破 損 が な くて も義 歯
を狭 義 の 義 歯 つ ま り診 断 ・治 療 に難 渋 す る こ との 多 い
の 維 持 不 良 を き た し た り,義 歯 異 物 が 発 症 す る こ とは
床 義 歯 異 物 に 限 定 した 上 で,異
十 分 に あ り得 る こ と な の で あ る.そ
物発症 の原因 を多 角的
こで我 々は床義歯
に 検 討 す る と共 に,摘 出 困 難 で あ っ た 床 義 歯 異 物 の特
異 物 発 症 の 原 因 を,装
徴 を明 ら か に し た い と考 え た.以 下,義
り義 歯 の 維 持 力 低 下 が あ る場 合 と,使 用 し て い る患 者
般 的 事 項,義 異 物,想
歯 異物症 の 一
歯 異 物 症 の 発 症 原 因,摘
出 困 難 な床 義 歯
側 に 原 因 が あ る場 合 の2つ
定 ろ う義 歯 模 型 の 意 義 の4項
目につ いて考 察
維 持 力 低 下 が な か っ た例 つ ま り患 者 側 に 主 因 が あ る と
す る. (1)義
着 さ れ て い る義 歯 側 に 原 因 つ ま
考 え られ た例 は41例 中2例 歯異物 症 の一般的 事項 につ い て
6000例 の本 邦 文 献 例 を検 討 し た 立 木 ら3)は,義 歯 異
に 分 け て 検 討 し た.義 歯 の
の み で,残
歯 の 維 持 不 良 が 認 め られ た.こ
りの39例 に は義
の39例 中10例 に は 患 者
側 に も義 歯 誤 嚥 に 関 与 した と考 え られ る 要 因(生 能 低 下)が
異 物 の約7%と
老 人 性 痴 呆 ・泥 酔 ・精 神 病 ・精 神 薄 弱 な ど で あ った.
述 べ て い る が,今 回 の我 々 の 結 果9.7%
認 め られ た.そ
理機
物 の 中 で も問 題 に な る義 歯 食 道 異 物 の 頻 度 を,全 食 道
の 内 容 は脳 出 血 ・脳 梗 塞 ・
は これ よ りや や 高 い値 で あ っ た.義 歯 異 物 の 性 別 は,
発 症 年 齢 別 な ら び に 発 症 年 度 別 に これ ら原 因 の 比 率 を
前 坂 ら2)の50例 で は 約3対1,我
見 る と,高 齢 者 に な る ほ ど ま た 年 度 が 新 し くな る ほ ど,
1で,そ
々 の41例 で は 約2対
の 比 率 は や や 異 な るが 男 性 に 多 い と い う点 で
は一 致 して い た.義
歯 異 物 の 年 齢 分 布 で は70歳 以 降 に
患 者 側 に も問 題 の あ る床 義 歯 異 物 の 頻 度 が 増 加 し て い る こ とが わ か っ た.前 述 の よ う な病 態 を 有 す る高 齢 者
最 も高 い ピー クが 認 め られ た 点 が 重 要 で あ る.こ れ ま
は 今 後 と も増 加 す る こ とが 確 実 と思 わ れ,歯
で の 報 告 で は 義 歯 異 物 は40歳 以 降 よ り 増 加 傾 向 を示
事 者 に は 義 歯 を 作 製 ・followす る もの と し て,介 護 従
し,50歳
事 者 に は 義 歯 の 安 定 性 をcheckす
台 ・60歳 台 に ピー ク を 持 ち70歳 以 降 で は減 少
科医療従
る もの と し て 注 意
日耳鼻
阿部・ 他=義 歯 異物 統計 とろ う義歯模 型
を促 す 必 要 が あ ろ う.
歯(腕
異 物 義 歯 の 維 持 力 低 下 の 原 因 を更 に詳 し く検 討 す る
鈎2個)は
93-1971
そのすべ てが 両側 の鈎が食 道壁 に く
い込 ん だ 形 で,す
な わ ち義 歯 の 長 径 が 食 道 の 走 向 と直
と,義 歯 に破 損 が 認 め ら れ た もの16例・ 認 め ら れ な か
角 に な る よ う に 嵌 在 し て い た.因
った もの23例 で あ っ た.こ
例 中12例 が1本
の ことは摘 出 した義歯 だ け
み に 義 歯 異 物 総 数41
義 歯 で そ の 中10例(83.3%)が
摘 出困
を詳 細 に観 察 し て もそ れ だ け で は 義 歯 異 物 発 症 の 原 因
難 例 で あ っ た.摘 出 困 難 で あ っ た18例 中15例 を 占 め た
を知 る こ とが で き な い こ と を 示 し て い る.床
有 鈎 義 歯 を鈎 の 種 類別 に み る と線 鈎10例・ 鋳 造 鈎5例
義歯 の維
持 力・安 定 性 は そ れ を装 着 して い る 顎 堤・ 歯(残 との 関 連 で み る こ と,つ
ま り歯 科 補 綴 学 的 見 地 か ら検
討 す る こ とが 必 要 で あ る.小 31例・50%,有
存 歯)
野 ら は63例 中 床 の 破 折 が
鈎 義 歯52例中 鈎 の 破 折 が41例・79%に
認 め られ た と報告1)し,前
で線 鈎 使 用 例 が 多 か っ たが,有
鈎 義歯 異物総 数 に占め
る そ れ ら鈎 の 種 類 別 の 割 合 は 線 鈎38.5%・
鋳 造 鈎83.3
%で 鋳 造 鈎 使 用 の 異 物 義 歯 に摘 出 困 難 例 が 多 か っ た. 以 上 を簡 単 に ま と め る と,摘 出 困 難 な床 義 歯 異 物 は 第
坂 ら も詳 細 は 不 明 な が ら50
1∼ 第2狭
窄 部に 嵌 在 し た 中 等 度 大 以 上 の 義 歯 あ るい
例 の ほ ぼ 全 例 に 鈎 の 破 折・ 変 形 あ る い は 床 の 破 折 が 認
は2腕 鈎 付 き の1本 義 歯 とい う こ と に な ろ う.1本
め られ た と報 告2)し て い る.我
歯 は 橋 義 歯(ブ
々の結 果 に比 し異物 と
義
リ ッ ジ)に 比 し て咀嚼 機 能・ 耐 久 性 が
な った 義 歯 の 破 損 の 割 合 が 高 い 理 由 の 一 つ と して は,
劣 り維 持 力 低 下 を き た し易 い こ とか ら歯 科 補 綴 学 的 に
前2者 の 対 象 が 各 々1972年
も 多 少 問 題 が あ る と さ れ て い るが,我
まで,1977年
まで と古 く,
々耳鼻 科医 とし
破 損 義 歯 を そ の ま ま使 用 せ ざ る を 得 な い 社 会 的・ 経 済
て も特 に維 持 不 良 の1本
的状 況に あ っ た と考 え られ る こ と,今 一 つ は 前 述 の よ
物 とな っ た 場 合 に は 摘 出 困 難 の こ とが 多 い こ と を社 会
うに歯 科 補 綴 学 的 見 地 か ら の 顎 堤,残
に啓 蒙 し て ゆ く必 要 が あ ろ う.
存 歯 の状態 を も
含 めた 検 討 が な さ れ た な か っ た こ と が 考 え られ る. (3)摘
(4)想
定 ろ う義 歯 模 型 の 意 義 に つ い て
昭 和55年 立 木5)6)は異 物 とな っ た 義 歯 の 形 状 を 知 り,
出困 難 な 床 義 歯 異 物 に つ い て
今 回 の 検 討 で は,摘
義 歯 は 誤 嚥 し 易 く一 旦 食 道 異
出 に当た って異物 義 歯の 回転や
その摘 出 方法 を検討 す る資料 にす る こ とを 目的 と し
糸 つ き ビ ニ ル 片 に よ る鋭 利 部 の 保 護 な どの 操 作・ 工 夫
て,ろ
を要 した 場 合 を 摘出 照 難 例 と し,例
補 綴 学 教 室 の 協 力 を 得 て そ れ を 実 施,良
え食 道 壁 に くい 込
う義 歯 模 型 を 作 製 す る こ と を 考 え,本 学 歯 学 部
んだ 鋭 利 部 が あ っ て も そ の 開 放 が 比 較 的 容 易 で あ っ た
こ と を16ミ リ映 画 に 記 録,岩
場合 に は 摘 出 容 易 例 と した が,こ
和55年7月29日)お
の 判 断 は あ く まで も
会(昭 和55年11月8日)で
ば な らな い.最
の 症 例 を含 む2例
近食 道 フ ァイバ ース コー プを使用 して 回 の検
手 医 学 会 第313回 例 会(昭
よ び 第32回日 本 気 管 食 道 科 学 会 総
食道 直 達 鏡 を使 用 した 場 合 で あ る こ とに 注 意 し な けれ
義 歯 異 物 を摘 出 し た と い う報 告8)が あ る が,今
い 結 果 を得 た
報 告 した.ま
た 阿 部 ら7)はそ
の 床 義 歯 異 物 を報 告 し,ろ
型 の 有 用 性 に つ い て 述 べ た.し
う義 歯 模
か し,そ の 後 この 想 定
討 で の摘 出容 易 例 が フ ァイ バ ー ス コー プ で も摘 出 可 能
ろ う義 歯 模 型 は あ ま り注 目 さ れ ず に 今 日 に 至 っ て い
とい う意 味 で は 決 し て な い こ と を 強 調 して お き た い.
る.想 定 ろ う義 歯 模 型 は,歯
摘 出 困 難 例 は 義 歯 異 物41例 中18例・43.9%で
あ った.
そ の18例 の 内 訳 な らび に義 歯 異 物 総 数 に 占 め る 割 合
に,生 体 侵 襲 な く,低
科 医 な ら誰 で も,短 時 間
コ ス トで 製 作 で き,得
られ る情
報 は 立 体 的 で 手 に と っ て あ らゆ る 角 度 か ら見 る こ とが
は,ま ず 上 顎 対 下 顎 で は11例(61%)対7例(39%)
で き る た め,以 前 に 行 わ れ て い た 平 面 ス ケ ッ チ 法 とは
で 上 顎 に 多 く,義 歯 異 物 総 数 に 占 め る割 合 も上 顎50%
比 較 に な らな い ほ ど優 れ た 量 的・ 質 的 情 報 を与 え て く
対 下 顎36.8%で
れ るの.我 々 は,床 義 歯 異 物 症 の 診 療 に 当 た っ て は,ま
で は2例
上 顎に 多 か っ た.総
義歯 対部 分床 義歯
対16例 で 圧 倒 的 に 部 分 床 義 歯 が 多 か っ た が,
異物 総 数 に 占 め る 割 合 は共 に約40%で
等 し か っ た.嵌
ず 十 分 な問 診 の 下 に 想 定 ろ う 義 歯 模 型 を作 製 す る.そ の ろ う義 歯 模 型 を 用 い て造 影X線
写 真・ 立 体X線
在 部 位 で は 第1∼
第2狭
窄 部 が18例 中16例(89%)と
を参 考 に,実
断然 多 く,第1∼
第2狭
窄部 に嵌在 した義歯 異物総 数
達 鏡 の視 野 に 入 る の は 異 物 義 歯 の どの 部 分 で,ど
に 占 め る摘 出 困 難 例 の割合 も61.5%と
高 か っ た,顎
堤
写真
際 の異 物 義 歯 の 嵌 在 状 況 を把 握 す る.直 の部
位 が 腔 壁 に刺 入 して い る 可 能 性 が 高 く,ど の 部 位 を 把
上 の 歯 数 に 換 算 し た 義 歯 の 大 き さ・ 鈎 の 数 で は,8歯
持 して 摘 出 して くれ ば 良 い か とい う概 略 の 摘 出操 作 手
大 以 上 の 大 き な 義 歯 お よ び3歯
順 を あ らか じめ 念 頭 に 入 れ て摘 出 術 に 臨 む.更
も鈎 の 数 が2個
の 例(大
例が 多 か っ た.18例
大以 下の 小 さな義歯 で
部 分 が1本
中10例(55.5%)を
義 歯)に
摘 出 困難
占 め た1本
義
に,術
に も想 定 ろ う義 歯 模 型 とX線 写 真 を み な が ら嵌 中在 状 況 を 再 確 認・ 再 検 討 し た り,摘 出 操 作 の 工夫 を 行 っ て
93-1972
阿 部・ 他=義
歯 異 物 統 計 と ろ う義歯 模 型
い る.こ の よ う な 詳 細 な 術 前・ 術 中 検 討 は,想 定 ろ う 義 歯 模 型 を作 製 す る こ とで 初 め て 可 能 に な っ た とい う こ とが で き る.形
状 が 複 雑 で,す
べ てオー ダー メイ ド
で あ る 故 に 同 一 の もの が 存 在 し な い 床 義歯 異 物 症 の 診 療 に 当 た っ て,想
れ まで に 想 定 ろ う 義 歯 模 型
を 作 製 し た20例 に つ い て,実 厳 密 に検 討 した 結 果,両
際 の 異 物 義歯 との 異 同 を
者 が 大 き く異 な っ た症 例 は1
例 も な く,全 例 に お い て 極 め て 有 用 な情 報 が 得 られ た こ と を確 認 で きた.た
だ し,想 定 ろ う 義歯 の 使 用 に 当
者 らが 述 べ た ご と く7)過信 し な い こ と が
大 切 で あ る.特
者 の 生 理 機 能 低 下 に 原 因 の あ っ た12例
歯 異 物 は す べ て8歯
3例
に 破 損 した 義歯 の 場 舎 に は,詳
診 に よ っ て破 損 の 状 況 を 再 現 し,ろ す る こ とが 重 要 に な る が,こ
細 な問
う義 歯 模 型 を修 正
の問診 内容 に重大 な誤 り
の床義
大 以 上 の 大 き な 義 歯 で あ っ た.生
理 機 能 低 下 の 主 な 内 容 は 脳 血 管 障 害5例・
老 人性痴呆
で あ っ た. 生 理機 (5)能 障 害 を 有 す る 高 齢 者 の 床 義 歯 異 物 症
定 ろ う義 歯 模 型 の 作 製 は 不 可 欠 の も
の と我 々 は考 え て い る.こ
た っ て は,著
(4)患
1990
が,近
年 増 加 傾 向 に あ る.
(6)直
達 鏡 下 摘 出 困 難 例 は39例
例 は1本
義 歯,破
損(十)例
難 例 の 嵌 在 部 位 は 第1∼ さ は8歯
中18例
は6例 第2狭
大 以 上 あ る い は3歯
で,そ
の 中10
で あ っ た.摘
出困
窄 部 が 大 部 分 で,大 大(1本
義 歯)が
き
大部分
で あ っ た. (7)想
定 ろ う 義 歯 模 型 を 作 製 し た20例
物 義 歯 と 同 形 の も の15例・ で,想
中,実
際の異
形 状 が 少 し 違 っ た も の5例
定 ろ う 義 歯 模 型 の 有 用 性 が 再 確 認 さ れ た.
が あ っ た り,老 人 姓 痴 呆 な どで 問 診 聴 取 そ の もの が 不 文
能 で あ る とい う事 態 も考 え られ る か ら で あ る.摘 出 に 際 し て 問 題 に は な ら な か っ た が,今
回 の20例 中5例
で
1)小
定 ろ う義 歯 模 型 は あ く まで も
2)前
性 能 フ ァ イ バ ー ス コー プ に よ る異 物
摘 出 術 や 開 胸 手 術 が,床
3)立
々 は〓 誤 嚥 に よ る気 道 食 道
か し,こ の 原 則
木
食会報 4)佐
孝,村
井 和 夫,佐
5)立
木 他:義
孝,佐
藤 護 人,金
歯 異 物(16ミ
1980. 木
孝:義
7)阿
部
男 性 に好 発 し,嵌 在 部 位 は( 気 道2例,
(す べ て下 顎)で
中5例
は総義 歯
因が義 歯の維 持
力 低 下 に あ る もの29例・ 患 者 の 生 理 機 能 低 下 に あ る も の2例・ 両 者 が 相俟 って 発 症 し た もの が10例 で あ っ た. (3)義
8)佐
藤 邦 夫,狩 他:上
藤 護 人,金
部
隆,田
中 久敏
手 医 学 会 第313回例回
〉 岩手 医 学 雑 誌
32:1075,
日本 気 管食 道 科 学 会総 会 気食 会報
子 康 治,斎
22:199,1981.
藤 達 雄,清
野 和 夫: 喉
野
敦,折
居 正 之,菅
井
俊,佐
藤 俊一
部 消 化 管 異 物 の 内 視 鏡 的 摘 出 に つ い て の 検 討.
Gastroenterol
あ っ た.
床 義 歯 異 物 症 の(2) 発 症 原 因 は,主
隆,佐
道 及 び食
52:967-971,1980.
異 物 症41例 を統 計 的 に 検 討 し次 の 結 果 を得 た.
で あ っ た.41例
藤 達 雄:
知 見.日 気
義 歯 食 道 異 物 摘 出 の 為 の ろ う 義 歯 模 型 の 作 製.耳
過 去21年 間 に 岩 手 医 大 耳 鼻 咽 喉 科 で経 験 した 床 義 歯
下 咽 頭2例,食道37例
隆,斉
良 公 志:気
子 康 治,阿
歯 異 物.第32回
(昭 和55年11月8日)(会)日
1)約2対1で
部
27:164-169,1988.
リ映画).岩
ない とい う 前 提 の 上 に 生 きて い る こ と を銘 記 し な け れ 6)立
康 夫,世
鼻臨床補
(昭 和55年7月29日),(会
わ り に
藤 護 人,阿
陣 紘 治,原田
前・ 術 中 検 討 と摘 出 操 作 の 工 夫 を我 々 耳 鼻科医 が 怠 ら
V.お
恵,米 野 邦 彦:
間 の 義歯 食 道 異 物 症 例 の 統計 的 観 察.日
道 へ の 義 歯 異 物.耳
は 前 述 の よ うな 想 定 ろ う義 歯 模 型 な ど に よ る 十 分 な 術
ば な らな い.
盛
29:221-229,1978.
藤 英 治,夜
異 物 は 熟 達 した 耳 鼻 科 医 が 経 口 的 に 摘 出 す べ き で あ る〓 とい う原 則 を大 切 に し て い る.し
紀 久 夫,杉
義 歯 食 道 異 物 の 診 断 と治 療 に 関 す る2,3の
義 歯 異 物 症 に 対 して も安 易 に
行 わ れ る傾 向 が あ るが,我
崎 為 夫,徳田
わ が 教 室43年
科 に関 連 あ る気道食
25:235-240,1974.
気 食 会 報 29:323-327,1978.
治 療 器 具 の 進 歩 や 高 カ ロ リー 輸 液 法 な どの 治 療 法 の 発 達 に よ っ て,高
気食 会 報
坂 明 男,宮
模 型 で あ る こ と を 忘 れ て は な らな い.
献
譲,斉 藤 誠 次,野 本 種 邦:歯
道 の 異物.日
そ の 形 状 が や や 異 な っ て い た の は この 問 診 不 足 に よ る と こ ろ が 大 きか っ た.想
野
Endosc
27:695-705,1985.
想 定 ろ う義 歯模 型 の作 製 に 当 た って ご協 力頂 い た本学 第 2補 綴 学 教 室・清 野 和 夫助 教 授 に感 謝 致 し ます .な お,本 論 文の 要 旨 は第40回 日本気 管 食 道 科学 会 で 口演 した.
歯 の 維 持 力 低下 に 原 因 の あ っ た39例 中 義 歯 の
破 損(+)例16例・ の 破 損(+)例
破 損(-)例23例
で あ っ た.義
で は床 の 破 折 が10例 と多 く,破 損(-)
例 で維 持 不 良 の1本
義 歯 が10例 と多 か っ た.
歯
(1990年4月16日
受稿
1990年6月22日
受 理)
別 刷請 求 先 〒020盛 岡市 内 丸19-1 岩手 医 科大 学 耳 鼻咽 喉 科学 教 室
阿部
隆