真菌誌

第 56 巻

第1号

J 41

2015 年

シリーズ

用語解説(No.5)

日本医真菌学会 用語委員会

好中球細胞外トラップ

インフラマソーム

好中球は,生体防御系の中心となる細胞の一つであり, 常に骨髄で生産され末梢に供給されている.末梢血中の 好中球は局所の炎症や感染を鋭敏に感知し,速やかに局 所に動員される.好中球は,貪食作用,活性酸素産生, 次亜ハロゲン酸産生,顆粒中に含まれる抗菌成分など, 様々な殺菌機構を用いて生体防御に寄与している.さら に,最近,活性化された好中球は,好中球細胞外トラッ プ(Neutrophil Extracellular Traps(NETs) )と呼ばれ る構造物を細胞外に放出することが明らかとなってき た. NETs は,DNA,ヒストン,ミエロペルオキシダーゼ, 好中球エラスターゼなどの顆粒成分を含む網目状構造物 であり,細菌や真菌などの微生物病原体を補足し,抗菌 作用に関与していることが明らかにされてきた.まさに 「投網」で病原体を一網打尽にするといったイメージを 連想させる名称である.NETs 形成は,PMA や菌体成 分であるリポポリサッカライド,グラム陽性菌,グラム 陰性菌,真菌(Candida albicans, Aspergillus fumigatus)によって誘導されることが見出されつつあり, 今後も感染免疫に関わる多くの事例が報告されるものと 思われる.また,全身性エリテマトーデスや血管炎など の自己免疫疾患における,好中球の有害作用にも NETs 形成が関与していることが示唆されている.

宿主細胞は,病原微生物の侵入に対し,パターン認識 受容体を介した認識機構により,速やかに生体防御反応 を発揮し,TNF-α,IL-1βなどの炎症性サイトカイン産 生を示す.IL-1βや Il-18 は多様な生理活性を示す炎症 性サイトカインであり,微生物などの刺激により前駆型 が産生され,活性型が分泌されるには,前駆体からの活 性型の切断が必要であるとされている.インフラマソー ムは IL-1βおよび IL-18 産生を制御する細胞内のタンパ ク 質 複 合 体 で あ り,刺 激 を 認 識 す る 受 容 体 で あ る NLRP,apoptosis-associated speck-like protein containing a caspase recruitment domain(ASC) , カスパーゼ-1 からなる.インフラマソームを活性化す るものとして,細菌,ウイルス,真菌(Candida albicans),尿酸結晶,ATP などが知られている.また,イ ンフラマソームの異常は自己炎症症候群の発症に関与し ていることが報告されている.

Neutrophil Extracellular Traps(NETs)

References: ・Brinkmann V et al., J Cell Biol 198: 773-783, 2012. ・Brinkmann V et al., Science 303: 1532-1535, 2004.

東京薬科大学免疫学教室・石橋健一

Inflammasomes

References: ・Martinon F et al., Cell 117: 561-74, 2004. ・Franchi L et al., Eur J Immunol. 40: 611-5, 2010.

東京薬科大学免疫学教室・石橋健一

[Term 5: Neutrophil extracellular traps and inflammasomes].

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