日耳 鼻
80-1483
THE CHANGES
OF SURFACE
STRUCTURE
-The
SHIGENOBU Department
ON SOFT TISSUE
INDUCED
BY
CO2 LASER IRRADIATION. observation with scanning electron microscope-
of Otolaryngology,
MIHASHI,
Kurume
(Director:
University,
11. Hirano,
The purpose of this paper is to investigate induced by COQ laser irradiation.
M.D. School of .1letlicine, Kurume.
.11.D.)
the changes of surface structure
on soft tissue
The tongue of mongrel dogs was used as the test tissue and
the laser beam was applied to the tissue at a right angle.
The
morphological
changes
studied with a scanning electron microscope. The results were as follows. 1) The immediate changes induced by a fixed irradiation of COs laser were
were
characterized
by u tissue defect like - crater. 2)
The changes on mucosal surface extending
peripherally
from the crater
edge to the
normal area could be graded into three degrees. 3) consisted
The
immediate
effects induced
The former was represented observed
by COs laser irradiation
of the two factors, that is, the phvsio-mechanical in the area of the grade
were the heat effects, which
and the physio-chemical three
change
factor.
and the latter
was
in the area of grade two and one changes.
A80-1483…42010
炭 酸 ガ ス レー ザ ー 照 射 に よ る組 織 表 面 構 造 の 変 化 -走
査 電 子 顕 微 鏡 に よ る 観 察-
久留米大学医学部耳鼻 咽喉科学教室(主任:平野 実教授) 三 矯 重 信 I
ロ マ ニ フ レー タ ー に よ り手術 用 顕 微鏡に 接 続 して 使 用 し
は じ め に 炭酸 ガ ス レー ザ ー は 生 物 組 織 に 照 射 さえしる と,色 調 に 係 な くほ ぼ 完全 に 吸 収 され 熱 エ ネル ギ ー に 変 換 さ れ 関
る.こ の熱 エ ネル ギ ー は きわ め て 高 い の で,照 射 部 位 は瞬 的 に蒸 発 して 組織 欠 韻 を生 じ る.す な わ ち軟 部 組織 間 に
た.な
お 器 械 な らび に 照 射 方 法 の 詳細 に つ い て はす で に
文 献(1)(2)(3)に に す る.実
て報告
した の て こ こでは 略 す る こ と
験 材 料 と して は 成 犬 を 使 用 し,イ
脈 麻 酔 下 に 照 射 を 行 っ た.な
お こ の 際,レ
ソゾー ル 静
ー ザ ー照 射 の
対 す る炭 酸 ガ ス レー ザ ー固 定 照 射 の即 時 的 変 化 はcrater
効 果 を単 純 化 す る た め に 人 射 光 は 舌 下面 粘 膜 に 対 し直 角
形 成が 特 長 で あ る.本 稿 に お いて は 炭 酸 ガス レー ザ ー 照
に 照 射 さ れ る よ う固 定 し た.
後 のcrater表面構造の変化走査型電子顕微鏡に
射直
観 察 試 料 作 製 に二あ た っ て は,照
射 直 後 た だ ちに 照射 部
て観 察 した の で 報 告す る. II
研究方法および対象
使用 した 器 械 は アメ
カ ン *プ
ティカル社 に て開発
位を切除し、生塩水にて洗浄後，2.5%グルタールアルデハイド(燐酸緩衝液,pH7.4)にて前固定を行い、次いで1%オスミウム酸(燐酸緩衝液,pH7.4)にて後固 定 を 行 っ た.そ の 後順 列 ア セ トン 溶 液 に て 脱 水,し,次 され た50W出力 の 外 科用 炭酸 ガス レー ザ ー で,マ イ ケ
12-33
い
80-1484
三 橋＝ 炭酸 ガ ス レー ザ ー外 科
で順 列Freon113-ア
セ トン溶 液 に て 置 換 し,フ レオ ン
を 使用 した臨 界 点 乾燥 装 置 に て 乾燥 さ せ,ゴ ール ド パ ラ ジ ウ ム真 空 蒸 着 を施 し,日 本電 子JSM-35型
走査電
顕 に て観 察 した,
図3はcraterの
中心 部 を通 る垂 直 横 断 面 に お け る辺
縁 部 の光 顕 像 で あ る,Craterの
内側 壁 に は きわ め て 薄
い炭 化 層 が あ り,こ の 層 に 接 して 好 塩 基 性色 素 に染 っ た 凝 固 壊 死 層 が 存 在 す る.Crater周
ＩII観 察 成 績
囲 の 組織 障害 範 囲 は
底 部 に おい て 最 も小 で あ り,内 側 壁 よ り辺縁 部 に ゆ くに
図1は 入 射 エ ネ ルギ ー8.8Joules(20W,0.44sec.) に よ り生 じたcraterを
照射 直 後 手術 用 顕 微鏡 に よ り撮
影 した もの で あ る.Craterの
直 径 は2mm内
外 で あ り,
内 側 壁 は 茶 褐色 を呈 し,ご く少 量 の炭 化 片 の 付着 を認 め る.辺 縁 部 は 幾 分盛 りあが り部 分 的 に 炭 化 して お り,そ の 周 辺 部 で は 正 常 粘膜 の 色調 を失 い 蒼 白色 を 呈 し て い る.ま た,crater周
1977
囲 を 詳細 に観 察 す る と飛 散 した きわ
め て 小 さい 炭 化 片 を認 め る こ とが で き る.同 一 照射 条 件 にお け る走 査電 顕 像 を 図2に 示 す.Craterの
従 って 増 大 し,粘 膜 上 皮 面 で 最 も大 で あ る. と くに上 皮 層 に お け る変 化 は 多 彩 で あ り,こ の部 の変 化 は 辺 縁 よ り外 側 健 常 部 に か け て4つ のGradeに
分け
る こ とが で きた2)3). 走 査 電 顕 に おけ る観 察 にお い て は 図3に 付 した 番号 部 位 につ いて 組 織 表 面 構 造 の 変 化 につ い て 観 察 を 行 った. (1)Crater辺
縁 部 を 内 側方 向 よ り観 察 す る と,図4に
示す ご と く,組 織 内 水 分 の 蒸 発 に も とつ く多数 の2次 小
全 景 は火
山 の 噴 火 口に きわ め て 類 似 した様 相 を呈 して い る.内 面 は 不 規 則,凹 凸 不 平 で ス ポ ンジ様 を呈 し,多 数 の2次 小 孔 を認 め る.辺 縁 部 は 隆 起 を 形成 して い る.
図3Crater辺
図120W,0.44sec.(8.8Joules)の よ る 変 化.Crater形
縁 部 の 垂 直 横 断 面(×50)
組 み合 せ に 成 が 特 長 で あ る.
図4Crater内 図220W,0.44sec.の 走 査 電 顕 像(×50)
組 み 合 せ に よ る 変 化.
図3の
番 号(1)に
側 辺縁 部 相 当 す る 部 分.
Crade3(ﾗ100)
12-34
日耳鼻
三 橋＝ 炭 酸 ガ ス レー ザ ー外 科
孔 を認 め る.ま た 上 皮 は下 部 組 織 よ り剥 離,隆 起 し,そ
80-1485
(2)Crater辺
縁 部 剥 離 上 皮 外 側 面 の 変 化 を 図7に
示
の先 端 部 で は 図5に 示 す ご と く大 小 さ ま ざ まの 大 き さの
す
2次 小 孔 と と もに 一 部 に ひ び わ れ,亀 裂 を 認 め る.上 皮
microridgeは
下 の下 部 組織 は 図6に 示 す ご と くあた か も溶 岩 が 固 ま っ
起 状 を 呈 す と と も に 不 規 則 な しわ を 認 め る の み で あ る.
た よ うな様 相 を呈 して い る.
こ の 部 で は 個 々 の 細 胞 は 識 別 で き ず,細
(3)剥
消 失 し,の
っぺ り して お り,な
離 上 皮 の 基 部 で は,図8に
縁部
胞 表 面 のmicroridgeは
剥離 上 皮先 端 の2次 小
孔 形 成 な らび に亀 裂 像(×480)
図7Crater辺 図3の
縁 剥 離上 皮 外側 部
番 号(2)に
相 当 す る 部 分.
Crade3(×2,000)
図8剥 図3の(3)に 図6Crater内
12-35
部 上 皮 下 組 織 の 凝 固 部(×480)
Crad2(×2,000)
離 上皮 の基 部 相 当 す る部 分,
々の
胞 全 体 と して
しそ の 表 面 は 不 規 則 で あ る.
図5Crater辺
だ らか な
示 す ご と く,個
細 胞 は 識 別 可 能 で あ る が 明 確 で は な い,細 縮 小 傾 向 を 呈 し て い る,細
胞表面の
消失
1977
三 橋＝ 炭 酸 ガ ス レー ザ ー外 科
80-1486
(4)のさ らに 外 側 部 に お いて は,図9に
示 す ご と く,個
示 す ご と く,そ の 輪 廓 は 多 角 形 で,細 胞 表 面 に は 畝 状の
々の 細 胞 は 明確 に識 別 され 得 る.各 々の 細 胞 は 拡 大 して
細 長 い 隆 起,microridgeを
い るが,核
に 移 行 して い た,
は 反 対 に縮 小 し表 面 よ り幾 分 突 出す る傾 向 を
呈 してい る.細 胞 の境 界部 は 個 々の 細 胞 の 拡 大 に伴 い幾 分 盛 りあ が って い る.細 胞 表 面 の 微 細 構 造 は比 較 的 よ く 保 た れ て い るが,う
ね 状 のmicroridgeは
認 め られ な
い.
ＩV考
明確 に 認 め る 正常 粘膜 上 皮
按
可 視 光 線 領域 の レー ザ ー は そ の補 色 に 吸収 され や す い とい う特 長 を有 して い るが,10.6μmの
波 長 を有 す る炭
酸 ガ ス レー ザ ー は生 物 組 織 に照 射 され る と,色 調 に関 係
以 上 の 変 化 はcraterのedgeよ
り500μm内
外に認
め られ る変 化 で あ り,こ れ よ り外 側 部 に お い て は図10に
な くほ ぼ完 全 に吸 収 され て熱 エ ネル ギ ー に 変 換 され る. あ る一 定 の閾 値 以 上 の エ ネル ギ ー が 組 織 に照 射 さ れ る と,組 織 内液 体 成 分 は 瞬 間 的 に蒸 発 し組 織 欠 損 が 生 じる わ け で あ る,こ の 際,レ ー ザ ー 光 を 移 動 さ せ れ ば 切 開 切 除 が 可能 で あ る し,固 定 して 照 射 す れ ばcrater状 織 欠 損が 生 じ る.こ のcraterの
の組
中 心 部 を通 る垂 直 横断
面 に おけ る光 顕 像 を み て み る と,ち ょ う どつ り鐘 を さか さ に した 形 の組 織 欠 損 を 呈 して い る.ま たcrater周
囲
の組 織 障 害 範 囲 は 底 部 に お い て 最 も小 で あ り,内 側 壁 よ り辺 縁 部 に ゆ くに 従 って 増 大 し,粘 膜 上 皮 面 で 最 も大 で あ る.こ の 変 化 は と り もな お さ ず レー ザ ー光 エ ネ ル ギー 分 布 と裏 腹 の 関 係 に あ る.す な わ ち,レ 本 ザ ー光 エ ネル ギ ー分 布 を横 断 面 で み る と,中 心部 で 最 もエ ネ ル ギ ーが 高 く周 辺 部 へ ゆ くに 従 って ス ロー ブ状 に 滅少 す る ガ ウス 分布 を呈 して い る.従 って 中 心 部 す な わ ちcrater底
部
で は最 も高 い エ ネ'レギ ー が作 用 して組 織 内水 分 は瞬 間 的 に蒸 発 し,底 部 隣 接組 織 へ の 熱 の伝 搬 は組 織 を通 しての 伝 導 のみ に よ り行 わ れ る.こ れ に 対 し辺縁 お よ び そ の外 図9図3の
番 号(4)に Crade1(×2,000)
相 当す る部 分
方 の上 皮 表 面 に お い て は,crater内
部 よ りの組 織 を通 し
ての 熱 の 伝 導 に 加 え,エ ネ ル ギ ー 分 布 曲線 のす そ野 の部 分 よ りの 直 接 照 射 に も とつ く熱 作 用 を受 け る わ け で あ る.そ れ ゆ え にcrater辺
縁 部 よ り外 側健 常 部 にか けて
の 上 皮 層 の 多彩 な 変 化 は きわ め て 高 い熱 作 用 か らよ り低 い熱 作 に 至 る まで の 段 階 的熱 効 果 を 如実 に 示 して い る も の と言 え る. そ こで 走 査電 顕 に よ る観 察 に お いて 認 め られ たcrater の 辺 縁 部 よ り外 側 健常 部 に 至 る上 皮 表 面 の形 態 的 変 化 を ま とめ て み ると ほ ぼ3つ のGradeに
分 け る ことが で き
る. Grade3(図4,7)はcrater辺
縁部の剥離上皮先
端 部 よ りそ の外 側 面 に お け る 変化 で あ り,細 胞 表 面 の micｒoridgeは
消 失 し,無 構 造 化 して お り,個 々 の細 胞
は 識 別 で きず,上 皮 の 剥 離現 象,2次
小 孔 形 成,亀 裂,
ひ び われ な ど組 織 内水 分 →蒸 気 の 相転 移 の 結果 生 じた変 図10図3の 番号(5)に 相 当す る 部分 正 常 扁平 上 皮 像 を呈 して い る(×2,000)
化が 特 長 で あ る.こ の部 の変 化 は文 献(2)で 的観 察 のGmde4に
述べた光顕
相 当し て い る.
12-36
日耳 鼻 三
橋=炭酸
Grade2(図8)は る 変化 で,細
剥 離上 皮 の 基 部 に お い て 認 め られ 胞 表 面 のmieroridgeは
は 不 規則 で あ,細 る｡こ
消 失 し,そ
のiiii
胞 全 体 と して は 縮 小 傾 向 を 結 し て い
の 部 の 変 化 は 光 顕 所 見Grade3.coagulation
necrosisの
あ り,細
科
80-1×1487
2.Crater辺
縁 部 よ り外側健
変 化 は,3つ 3.炭
のGradeに
の
大 別 で き る.
れ はGrade3に
お い て 代 表 さ れ る物
理 機 械 的 効 果 とGrade2,1に 続 く外側 部 に み られ る 変 化 で
常 部 に 至 る 上 皮表面
酸 ガ ス レーザ ー照 射 の 即時 的 変 化は 熱 効 果 に よ
る も の で あ り,こ
部 に 相 当す る.
Grade1はGrade2に
が,明
ガ ス レー ザ外
お い て 認 め られ る 物J?C':化
学 的 効 果 よ りな る と言える.
胞 表 面 の 微細 構 造 は 比 較 的 よ く 保 た れ て い る
確 なmirroridgeは
て い る が,核
認 め られ な い.細
は 縮 小 して い る.こ
胞 は拡 大 し
れ は 熱 に よ る 核模 な ら
参 1)三
び に 原 形 質 膜 の 透 過性 の 変 化 に よ り 細 胞 内 水 分 の 分 市 移 動 が お こ っ た た め と 考 え られ る.こ 見Grade2に
一 致 し て い る.光
られ たGrade1す
は な く,よ
考
文
献
酸ガスレ
ー ザ 外 科,日耳
酸ガスレ
ー ザ 照射
鼻 ,78;1244-
128,1975. 2)三
橋 重 信:炭
に よ る組
織 変化,日
顕 的観 察 に お い て認 め
な わ ちnuclear
顕 観 察 で 認 め られ な い の は,こ
の 部 の 変化 は 光 顕 所
橋重信:炭
swellingが
走査電
3)
Alihashi,
の 部 の 変 化が 上 皮 表 断 で
り 深 部 に お い て み られ る た め と 解 釈 され る.
S., el al.:
Laser
surgery
logy;
Interaction
of CO2 laser
Ann.
N.Y.
Sci.,
Acad.
in otolaryngo-
and
soft
267; 2o3-294,
tissue.
1976.
以 上 の 走 査 電 顕 に よ る 観 察 に お い て 認 め られ た 所 晃 よ
Acknowledgement り炭 酸 ガ ス レ ー ザ ー 照 射 の 即時 的 変 化 は 熱 効 果 に よ る も の で あ り,こ の 熱 効 果 はGrade3に
お い て代表される
The Jako
織 内 水 分 の 瞬 間 的 蒸 発 に 伴 う 圧 に よ るphysio-mechanical effectとGrade2,1に
anther
is indebted
to Drs.
M.S.
Strong,
G.J.
組
who
investigations
have
given
with
an
a carbon
opportunity dioxide
to laser
at
perform Boston
お い て み られ る よ り 低 い 熱 作
Universitv. に も と つ く組 織 内 蛋 白 の 凝 固 変 性 を も た ら すphysio chemical
effectの2つ
V結
用
の 効 果 よ り な る と言 え る.
稿 を 終 わ る に あ た り,研 ス ト ソ 大 学 ス1･ロ
論
炭 酸 ガ7レ
究 の 機 会 を与 え て ト さった ボ
ン グ 教 授.ヤ
ー コ ー 教 授 お よ び中野教
に 深 謝 の 意 を表 し ま す.
ー ザ ー を 犬 の 舌 下面 粘 膜 に 照 射 し,そ
面 構 造 の 変 化 を 走 査 電 子 顕 微 鏡 に て 観 察 し,以
の 表
下の結論
なお本論
文 の 要 旨 は 第76回日耳鼻
た.
を 得 た. 1.炭
酸 ガ ス レ ー ザ ー固 定 照 射 の即時 ,す
る.
12-37
な わ ちcrater形
的 変 化 は火 山 の 成が特長であ 噴火口状の組織欠損
(原稿受付 昭和52.8.11日)
授 総 会 に て展示講演し
80-1483
THE CHANGES
OF SURFACE
STRUCTURE
-The
SHIGENOBU Department
ON SOFT TISSUE
INDUCED
BY
CO2 LASER IRRADIATION. observation with scanning electron microscope-
of Otolaryngology,
MIHASHI,
Kurume
(Director:
University,
11. Hirano,
The purpose of this paper is to investigate induced by COQ laser irradiation.
M.D. School of .1letlicine, Kurume.
.11.D.)
the changes of surface structure
on soft tissue
The tongue of mongrel dogs was used as the test tissue and
the laser beam was applied to the tissue at a right angle.
The
morphological
changes
studied with a scanning electron microscope. The results were as follows. 1) The immediate changes induced by a fixed irradiation of COs laser were
were
characterized
by u tissue defect like - crater. 2)
The changes on mucosal surface extending
peripherally
from the crater
edge to the
normal area could be graded into three degrees. 3) consisted
The
immediate
effects induced
The former was represented observed
by COs laser irradiation
of the two factors, that is, the phvsio-mechanical in the area of the grade
were the heat effects, which
and the physio-chemical three
change
factor.
and the latter
was
in the area of grade two and one changes.
A80-1483…42010
炭 酸 ガ ス レー ザ ー 照 射 に よ る組 織 表 面 構 造 の 変 化 -走
査 電 子 顕 微 鏡 に よ る 観 察-
久留米大学医学部耳鼻 咽喉科学教室(主任:平野 実教授) 三 矯 重 信 I
ロ マ ニ フ レー タ ー に よ り手術 用 顕 微鏡に 接 続 して 使 用 し
は じ め に 炭酸 ガ ス レー ザ ー は 生 物 組 織 に 照 射 さえしる と,色 調 に 係 な くほ ぼ 完全 に 吸 収 され 熱 エ ネル ギ ー に 変 換 さ れ 関
る.こ の熱 エ ネル ギ ー は きわ め て 高 い の で,照 射 部 位 は瞬 的 に蒸 発 して 組織 欠 韻 を生 じ る.す な わ ち軟 部 組織 間 に
た.な
お 器 械 な らび に 照 射 方 法 の 詳細 に つ い て はす で に
文 献(1)(2)(3)に に す る.実
て報告
した の て こ こでは 略 す る こ と
験 材 料 と して は 成 犬 を 使 用 し,イ
脈 麻 酔 下 に 照 射 を 行 っ た.な
お こ の 際,レ
ソゾー ル 静
ー ザ ー照 射 の
対 す る炭 酸 ガ ス レー ザ ー固 定 照 射 の即 時 的 変 化 はcrater
効 果 を単 純 化 す る た め に 人 射 光 は 舌 下面 粘 膜 に 対 し直 角
形 成が 特 長 で あ る.本 稿 に お いて は 炭 酸 ガス レー ザ ー 照
に 照 射 さ れ る よ う固 定 し た.
後 のcrater表面構造の変化走査型電子顕微鏡に
射直
観 察 試 料 作 製 に二あ た っ て は,照
射 直 後 た だ ちに 照射 部
て観 察 した の で 報 告す る. II
研究方法および対象
使用 した 器 械 は アメ
カ ン *プ
ティカル社 に て開発
位を切除し、生塩水にて洗浄後，2.5%グルタールアルデハイド(燐酸緩衝液,pH7.4)にて前固定を行い、次いで1%オスミウム酸(燐酸緩衝液,pH7.4)にて後固 定 を 行 っ た.そ の 後順 列 ア セ トン 溶 液 に て 脱 水,し,次 され た50W出力 の 外 科用 炭酸 ガス レー ザ ー で,マ イ ケ
12-33
い
80-1484
三 橋＝ 炭酸 ガ ス レー ザ ー外 科
で順 列Freon113-ア
セ トン溶 液 に て 置 換 し,フ レオ ン
を 使用 した臨 界 点 乾燥 装 置 に て 乾燥 さ せ,ゴ ール ド パ ラ ジ ウ ム真 空 蒸 着 を施 し,日 本電 子JSM-35型
走査電
顕 に て観 察 した,
図3はcraterの
中心 部 を通 る垂 直 横 断 面 に お け る辺
縁 部 の光 顕 像 で あ る,Craterの
内側 壁 に は きわ め て 薄
い炭 化 層 が あ り,こ の 層 に 接 して 好 塩 基 性色 素 に染 っ た 凝 固 壊 死 層 が 存 在 す る.Crater周
ＩII観 察 成 績
囲 の 組織 障害 範 囲 は
底 部 に おい て 最 も小 で あ り,内 側 壁 よ り辺縁 部 に ゆ くに
図1は 入 射 エ ネ ルギ ー8.8Joules(20W,0.44sec.) に よ り生 じたcraterを
照射 直 後 手術 用 顕 微鏡 に よ り撮
影 した もの で あ る.Craterの
直 径 は2mm内
外 で あ り,
内 側 壁 は 茶 褐色 を呈 し,ご く少 量 の炭 化 片 の 付着 を認 め る.辺 縁 部 は 幾 分盛 りあが り部 分 的 に 炭 化 して お り,そ の 周 辺 部 で は 正 常 粘膜 の 色調 を失 い 蒼 白色 を 呈 し て い る.ま た,crater周
1977
囲 を 詳細 に観 察 す る と飛 散 した きわ
め て 小 さい 炭 化 片 を認 め る こ とが で き る.同 一 照射 条 件 にお け る走 査電 顕 像 を 図2に 示 す.Craterの
従 って 増 大 し,粘 膜 上 皮 面 で 最 も大 で あ る. と くに上 皮 層 に お け る変 化 は 多 彩 で あ り,こ の部 の変 化 は 辺 縁 よ り外 側 健 常 部 に か け て4つ のGradeに
分け
る こ とが で きた2)3). 走 査 電 顕 に おけ る観 察 にお い て は 図3に 付 した 番号 部 位 につ いて 組 織 表 面 構 造 の 変 化 につ い て 観 察 を 行 った. (1)Crater辺
縁 部 を 内 側方 向 よ り観 察 す る と,図4に
示す ご と く,組 織 内 水 分 の 蒸 発 に も とつ く多数 の2次 小
全 景 は火
山 の 噴 火 口に きわ め て 類 似 した様 相 を呈 して い る.内 面 は 不 規 則,凹 凸 不 平 で ス ポ ンジ様 を呈 し,多 数 の2次 小 孔 を認 め る.辺 縁 部 は 隆 起 を 形成 して い る.
図3Crater辺
図120W,0.44sec.(8.8Joules)の よ る 変 化.Crater形
縁 部 の 垂 直 横 断 面(×50)
組 み合 せ に 成 が 特 長 で あ る.
図4Crater内 図220W,0.44sec.の 走 査 電 顕 像(×50)
組 み 合 せ に よ る 変 化.
図3の
番 号(1)に
側 辺縁 部 相 当 す る 部 分.
Crade3(ﾗ100)
12-34
日耳鼻
三 橋＝ 炭 酸 ガ ス レー ザ ー外 科
孔 を認 め る.ま た 上 皮 は下 部 組 織 よ り剥 離,隆 起 し,そ
80-1485
(2)Crater辺
縁 部 剥 離 上 皮 外 側 面 の 変 化 を 図7に
示
の先 端 部 で は 図5に 示 す ご と く大 小 さ ま ざ まの 大 き さの
す
2次 小 孔 と と もに 一 部 に ひ び わ れ,亀 裂 を 認 め る.上 皮
microridgeは
下 の下 部 組織 は 図6に 示 す ご と くあた か も溶 岩 が 固 ま っ
起 状 を 呈 す と と も に 不 規 則 な しわ を 認 め る の み で あ る.
た よ うな様 相 を呈 して い る.
こ の 部 で は 個 々 の 細 胞 は 識 別 で き ず,細
(3)剥
消 失 し,の
っぺ り して お り,な
離 上 皮 の 基 部 で は,図8に
縁部
胞 表 面 のmicroridgeは
剥離 上 皮先 端 の2次 小
孔 形 成 な らび に亀 裂 像(×480)
図7Crater辺 図3の
縁 剥 離上 皮 外側 部
番 号(2)に
相 当 す る 部 分.
Crade3(×2,000)
図8剥 図3の(3)に 図6Crater内
12-35
部 上 皮 下 組 織 の 凝 固 部(×480)
Crad2(×2,000)
離 上皮 の基 部 相 当 す る部 分,
々の
胞 全 体 と して
しそ の 表 面 は 不 規 則 で あ る.
図5Crater辺
だ らか な
示 す ご と く,個
細 胞 は 識 別 可 能 で あ る が 明 確 で は な い,細 縮 小 傾 向 を 呈 し て い る,細
胞表面の
消失
1977
三 橋＝ 炭 酸 ガ ス レー ザ ー外 科
80-1486
(4)のさ らに 外 側 部 に お いて は,図9に
示 す ご と く,個
示 す ご と く,そ の 輪 廓 は 多 角 形 で,細 胞 表 面 に は 畝 状の
々の 細 胞 は 明確 に識 別 され 得 る.各 々の 細 胞 は 拡 大 して
細 長 い 隆 起,microridgeを
い るが,核
に 移 行 して い た,
は 反 対 に縮 小 し表 面 よ り幾 分 突 出す る傾 向 を
呈 してい る.細 胞 の境 界部 は 個 々の 細 胞 の 拡 大 に伴 い幾 分 盛 りあ が って い る.細 胞 表 面 の 微 細 構 造 は比 較 的 よ く 保 た れ て い るが,う
ね 状 のmicroridgeは
認 め られ な
い.
ＩV考
明確 に 認 め る 正常 粘膜 上 皮
按
可 視 光 線 領域 の レー ザ ー は そ の補 色 に 吸収 され や す い とい う特 長 を有 して い るが,10.6μmの
波 長 を有 す る炭
酸 ガ ス レー ザ ー は生 物 組 織 に照 射 され る と,色 調 に関 係
以 上 の 変 化 はcraterのedgeよ
り500μm内
外に認
め られ る変 化 で あ り,こ れ よ り外 側 部 に お い て は図10に
な くほ ぼ完 全 に吸 収 され て熱 エ ネル ギ ー に 変 換 され る. あ る一 定 の閾 値 以 上 の エ ネル ギ ー が 組 織 に照 射 さ れ る と,組 織 内液 体 成 分 は 瞬 間 的 に蒸 発 し組 織 欠 損 が 生 じる わ け で あ る,こ の 際,レ ー ザ ー 光 を 移 動 さ せ れ ば 切 開 切 除 が 可能 で あ る し,固 定 して 照 射 す れ ばcrater状 織 欠 損が 生 じ る.こ のcraterの
の組
中 心 部 を通 る垂 直 横断
面 に おけ る光 顕 像 を み て み る と,ち ょ う どつ り鐘 を さか さ に した 形 の組 織 欠 損 を 呈 して い る.ま たcrater周
囲
の組 織 障 害 範 囲 は 底 部 に お い て 最 も小 で あ り,内 側 壁 よ り辺 縁 部 に ゆ くに 従 って 増 大 し,粘 膜 上 皮 面 で 最 も大 で あ る.こ の 変 化 は と り もな お さ ず レー ザ ー光 エ ネ ル ギー 分 布 と裏 腹 の 関 係 に あ る.す な わ ち,レ 本 ザ ー光 エ ネル ギ ー分 布 を横 断 面 で み る と,中 心部 で 最 もエ ネ ル ギ ーが 高 く周 辺 部 へ ゆ くに 従 って ス ロー ブ状 に 滅少 す る ガ ウス 分布 を呈 して い る.従 って 中 心 部 す な わ ちcrater底
部
で は最 も高 い エ ネ'レギ ー が作 用 して組 織 内水 分 は瞬 間 的 に蒸 発 し,底 部 隣 接組 織 へ の 熱 の伝 搬 は組 織 を通 しての 伝 導 のみ に よ り行 わ れ る.こ れ に 対 し辺縁 お よ び そ の外 図9図3の
番 号(4)に Crade1(×2,000)
相 当す る部 分
方 の上 皮 表 面 に お い て は,crater内
部 よ りの組 織 を通 し
ての 熱 の 伝 導 に 加 え,エ ネ ル ギ ー 分 布 曲線 のす そ野 の部 分 よ りの 直 接 照 射 に も とつ く熱 作 用 を受 け る わ け で あ る.そ れ ゆ え にcrater辺
縁 部 よ り外 側健 常 部 にか けて
の 上 皮 層 の 多彩 な 変 化 は きわ め て 高 い熱 作 用 か らよ り低 い熱 作 に 至 る まで の 段 階 的熱 効 果 を 如実 に 示 して い る も の と言 え る. そ こで 走 査電 顕 に よ る観 察 に お いて 認 め られ たcrater の 辺 縁 部 よ り外 側 健常 部 に 至 る上 皮 表 面 の形 態 的 変 化 を ま とめ て み ると ほ ぼ3つ のGradeに
分 け る ことが で き
る. Grade3(図4,7)はcrater辺
縁部の剥離上皮先
端 部 よ りそ の外 側 面 に お け る 変化 で あ り,細 胞 表 面 の micｒoridgeは
消 失 し,無 構 造 化 して お り,個 々 の細 胞
は 識 別 で きず,上 皮 の 剥 離現 象,2次
小 孔 形 成,亀 裂,
ひ び われ な ど組 織 内水 分 →蒸 気 の 相転 移 の 結果 生 じた変 図10図3の 番号(5)に 相 当す る 部分 正 常 扁平 上 皮 像 を呈 して い る(×2,000)
化が 特 長 で あ る.こ の部 の変 化 は文 献(2)で 的観 察 のGmde4に
述べた光顕
相 当し て い る.
12-36
日耳 鼻 三
橋=炭酸
Grade2(図8)は る 変化 で,細
剥 離上 皮 の 基 部 に お い て 認 め られ 胞 表 面 のmieroridgeは
は 不 規則 で あ,細 る｡こ
消 失 し,そ
のiiii
胞 全 体 と して は 縮 小 傾 向 を 結 し て い
の 部 の 変 化 は 光 顕 所 見Grade3.coagulation
necrosisの
あ り,細
科
80-1×1487
2.Crater辺
縁 部 よ り外側健
変 化 は,3つ 3.炭
のGradeに
の
大 別 で き る.
れ はGrade3に
お い て 代 表 さ れ る物
理 機 械 的 効 果 とGrade2,1に 続 く外側 部 に み られ る 変 化 で
常 部 に 至 る 上 皮表面
酸 ガ ス レーザ ー照 射 の 即時 的 変 化は 熱 効 果 に よ
る も の で あ り,こ
部 に 相 当す る.
Grade1はGrade2に
が,明
ガ ス レー ザ外
お い て 認 め られ る 物J?C':化
学 的 効 果 よ りな る と言える.
胞 表 面 の 微細 構 造 は 比 較 的 よ く 保 た れ て い る
確 なmirroridgeは
て い る が,核
認 め られ な い.細
は 縮 小 して い る.こ
胞 は拡 大 し
れ は 熱 に よ る 核模 な ら
参 1)三
び に 原 形 質 膜 の 透 過性 の 変 化 に よ り 細 胞 内 水 分 の 分 市 移 動 が お こ っ た た め と 考 え られ る.こ 見Grade2に
一 致 し て い る.光
られ たGrade1す
は な く,よ
考
文
献
酸ガスレ
ー ザ 外 科,日耳
酸ガスレ
ー ザ 照射
鼻 ,78;1244-
128,1975. 2)三
橋 重 信:炭
に よ る組
織 変化,日
顕 的観 察 に お い て認 め
な わ ちnuclear
顕 観 察 で 認 め られ な い の は,こ
の 部 の 変化 は 光 顕 所
橋重信:炭
swellingが
走査電
3)
Alihashi,
の 部 の 変 化が 上 皮 表 断 で
り 深 部 に お い て み られ る た め と 解 釈 され る.
S., el al.:
Laser
surgery
logy;
Interaction
of CO2 laser
Ann.
N.Y.
Sci.,
Acad.
in otolaryngo-
and
soft
267; 2o3-294,
tissue.
1976.
以 上 の 走 査 電 顕 に よ る 観 察 に お い て 認 め られ た 所 晃 よ
Acknowledgement り炭 酸 ガ ス レ ー ザ ー 照 射 の 即時 的 変 化 は 熱 効 果 に よ る も の で あ り,こ の 熱 効 果 はGrade3に
お い て代表される
The Jako
織 内 水 分 の 瞬 間 的 蒸 発 に 伴 う 圧 に よ るphysio-mechanical effectとGrade2,1に
anther
is indebted
to Drs.
M.S.
Strong,
G.J.
組
who
investigations
have
given
with
an
a carbon
opportunity dioxide
to laser
at
perform Boston
お い て み られ る よ り 低 い 熱 作
Universitv. に も と つ く組 織 内 蛋 白 の 凝 固 変 性 を も た ら すphysio chemical
effectの2つ
V結
用
の 効 果 よ り な る と言 え る.
稿 を 終 わ る に あ た り,研 ス ト ソ 大 学 ス1･ロ
論
炭 酸 ガ7レ
究 の 機 会 を与 え て ト さった ボ
ン グ 教 授.ヤ
ー コ ー 教 授 お よ び中野教
に 深 謝 の 意 を表 し ま す.
ー ザ ー を 犬 の 舌 下面 粘 膜 に 照 射 し,そ
面 構 造 の 変 化 を 走 査 電 子 顕 微 鏡 に て 観 察 し,以
の 表
下の結論
なお本論
文 の 要 旨 は 第76回日耳鼻
た.
を 得 た. 1.炭
酸 ガ ス レ ー ザ ー固 定 照 射 の即時 ,す
る.
12-37
な わ ちcrater形
的 変 化 は火 山 の 成が特長であ 噴火口状の組織欠損
(原稿受付 昭和52.8.11日)
授 総 会 に て展示講演し
