YAKUGAKU ZASSHI 135(1) 77―78 (2015)  2015 The Pharmaceutical Society of Japan

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―Foreword―

学部主導型薬学教育改革を目指して―第三者評価視点からみた教育改革 安 原 智 久,a 大 井 浩 明,b

Faculty-led Pharmaceutical Educational Reform―Reform from the View of Third-party Evaluation of Pharmaceutical Education ,b Tomohisa Yasuharaa and Hiroaki Ohi aFaculty

of Pharmaceutical Sciences, Setsunan University; 451 Nagaotoge-cho, Hirakata, Osaka 5730101, Japan: and of Pharmaceutical Sciences, Toho University; 221 Miyama, Funabashi, Chiba 2748510, Japan.

bFaculty

薬学 6 年制教育における分野別評価,いわゆる第 三者評価が 2014 年度から本格的に始まった. 6 年

部としての公的な取り組みが有機的に連携した体制 が学部全体の教育力の向上には不可欠である.

制薬学教育における教育成果を媒介に,教育プログ

本誌上シンポジウムでは,第三者評価の視点も含

ラムの一連の活動に関する質の監視と向上を目的と

めて,学部が組織として取り組む教育改革の必要性

した同僚評価(Peer

Review)1) である.適切な評価

を再考し,学部の支援を受けた薬学教育改革の実践

を行うために,教育のエビデンスが重要視されるよ

例を紹介する.1 報目では,大阪大学の平田先生に

うになったものの,それは単に学生の成績に対する

より第三者評価が何を評価するための制度なのか,

説明可能な証拠を用意すればよいというものではな

それによって各大学の 6 年制薬学教育に何をもたら

い.学生の成績は教育の成果の一部でしかなく,教

そうとしているのかを改めて問い直して頂いた.評

育のプロセスに関しても成果とエビデンスが求めら

価基準の文言は形式的でありそれゆえ,解釈が非常

れるようになった.つまり学部が組織として教育改

に難解である.できもしない無理難題を押し付けて

善に継続的かつ効果的に取り組むことが求められ,

いるという印象を与えてしまう可能性も否定しきれ

その成果や改善策の評価に対してもエビデンスが必

ない.評価に係わることなので模範解答を提示する

要とされているのである(薬学教育評価2)基準 10

ことはできないが,第三者評価に深く係わる平田先

2 3 ). Faculty Development が義務化され,学部教

生にその真意の一端が垣間見えるような執筆をお願

育の見直しは定着しつつあるが,その成果を測定し

いした.2 報目は新潟薬科大学の杉原学部長に自身

ている例は薬学教育ではまだ少ない.

の大学のこれまでの教育改革の歩みを執筆頂いた.

一方で,教員個人が教育改善の工夫を行い成功し

学部長の先導により力強く導かれた教育改革がどの

ている例も多く知られるようになり,「薬学教育」

ように進んでいくのかを実感頂ければ幸いである.

という領域名も定着した.しかし,個人の努力によ

それと同時に,新しいといわれる教育方略の安易な

る教育改善が学部全体の教育改善として浸透する例

導入が何をもたらすのか,という点にまで考察が及

は少なく,教員の異動などにより新しい教育への取

んでいる.残る 2 報では,学部が力強く後押しする

り組みが消滅してしまうこともしばしばみられる.

教育部門の活躍を紹介頂いた.学習支援・教育改革

教員の個人的な教育改革が先か,学部の組織として

を担当する教育部門に求められる役割は,各大学に

の方針決定が先か.そこに関しては各大学の事情が

入学する学生の層や学部教育のポリシーによって異

あると思われるが,教員が行う教育改善の努力と学

なるのが当然である.したがって,他大学の教育部 門の実践例を自大学にそのまま導入しても,うまく

a摂南大学薬学部(〒 573  0101

大阪府枚方市長尾峠町 45 番 1 号),b 東邦大学薬学部(〒 274 8510 千葉県船 橋市三山 221) e-mail: ohikomei@phar.toho-u.ac.jp 日本薬学会第 134 年会シンポジウム S32 序文

機能するとは限らない.何をやっているのかではな く,機能している教育部門は何が違うのか.その一 端を共有頂ければ幸いである.3 報目は北海道医療 大学の吉村先生らに執筆を頂いた.北海道の地域性

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YAKUGAKU ZASSHI

Vol. 135 No. 1 (2015)

による入学生の特徴を捉え,学生に対して真摯に丁

革は,かならずしも第三者評価を意識して実施され

寧に対応することを基本とした薬学教育支援室であ

たことではない.それにもかかわらず,第三者評価

る.この支援室を学部が支えて後押しすることで学

の観点に合致し,評価基準をよい形で満たしている

生が変わり,学部教員全体が変わるという事例であ

ように思われる.本誌上シンポジウムが,第三者評

る.学部全体からその活動を認められた北海道医療

価がもたらす薬学教育の将来への広い理解と,6 年

大学の薬学教育支援室は,なかなか実施できない教

制薬学教育の発展の一助となれば幸いである.

員の教授法への介入も果たしていることは特筆に値

REFERENCES

する.4 報目は摂南大学の安原先生らに執筆を頂い た.摂南大学では,薬学教育研究室が方略や評価法

1)

の調査・開発を行い,それらの手法を実践した評 価・フィードバックを研究として行っている.学習 支援センターと連携した活発な初年次教育を行って いるだけではなく,研究成果を学部教務へと還元し ていることも特徴である. これら 3 大学で行われている学部主導型の教育改

2)

Yamada T., Ritsumeikan Higher Edu. Stu., 105 (2013). 13, 91 Japan Accreditation Board for Pharmaceutical Education. ``Yakugaku kyouiku hyouka handbook.'': 〈 http: // jabpe.or.jp / special / handbook.html〉 , cited 24 July, 2014.

[Faculty-led pharmaceutical educational reform--reform from the view of third-party evaluation of pharmaceutical education].

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